【コラム/1月20日】仕掛けの24年から仕込みの25年へ

2025年1月20日

3つ目は、試行錯誤しながらの制度設計・運用が続いている点である。原子力発電の再稼働については、東北電力女川原子力発電所2号機および中国電力島根原子力発電所2号機の再稼働にこぎつけたものの、東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働は、依然として一進一退を繰り返していることや、昨年4月に全商品の取引が始まった需給調整市場では、調達率の低下が続き、暫定措置として募集量を減らすという策を講じているが、抜本的な改善にまでは至っていないと言った状況にある。

そして最後、4つ目は、各種市場の動向になる。容量市場や長期脱炭素電源オークションでは最新の入札の実施、準備が行われたほか、定期的に行われているFIT・FIP入札(太陽光、陸上風力、着床式洋上風力、バイオマス)、ベースロード市場、非化石価値取引市場等の応札および約定結果が公表されている。


25年は仕込みの年となるか

ここまで慌ただしく、様々な議論を纏めてきたが、これらはどれも大枠を纏めたものに過ぎず、より大切なのは、策定した政策や制度の大枠をいかに具体化し、実行に移すかという点にある。

とは言いつつ、年初から半年ほどかけて通常国会が開催されることから、また新たな政策が法案として提出、審議されることになる。

現段階で提出が予想されるのは、排出量取引制度の本格運用に向けたGX推進法の改正案、太陽光パネルのリサイクル義務化のためのリサイクル法案、そして洋上風力発電のEEZへの領域拡大を図るための再エネ海域利用法の改正案が挙げられる。

実行面では、足元だけ見ても、1月には異論も多い電気料金・ガス料金の負担補助、4月には改正温対法の施行、建築物省エネ法の最終段階の施行、託送等供給約款の改定、小売電気事業者の定期報告の内容追加・変更、事業用太陽光の長期安定適格事業者認定制度、5月には新年度の再エネ賦課金適用開始などが行われる予定である。

国においては、足元の制度設計と実装を進めつつ、これまでの取組をフォローアップ・見直しをし、さらに整理した大枠の具体化に向けた対応を図るといった難しい舵取りが求められることになる。


【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

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