【北陸電力/松田社長】未曽有の災害乗り越え 地域の持続的な発展と社会課題の解決に貢献

2025年2月2日

2024年に石川県能登地方を襲った地震と豪雨災害。

復旧・復興へは道半ば、エネルギーの安定供給という使命を果たしつつ、
地域の持続的な発展に貢献。

災害の知見を踏まえ、脱炭素化など社会課題解決に取り組む。

【インタビュー:松田光司/北陸電力社長】

まつだ・こうじ 1985年金沢大学経済学部卒、北陸電力入社。営業推進部長、エネルギー営業部長、石川支店長などを経て、2019年6月に取締役常務執行役員。21年6月から現職。

志賀 2024年元日の「令和6年能登半島地震」発生から1年が経ちました。復旧作業を記録した映像「電気を送り続けるために」を視聴しましたが、復旧の最前線で皆さんがどのような思いでおられたのか、よく伝わってくるものでした。

松田 北陸電力グループの社員と協力会社、他電力から応援に駆けつけてくれた皆さんが、過酷な災害現場でどのように活動したのか、今、見ていただくだけではなく後世に残したいという思いで作成した記録映像です。時を経て、震災後に入ってくる社員が増え、この災害を経験した社員が少なくなれば記憶は薄れていきます。新入社員教育のカリキュラムに取り入れるなど、組織としてしっかりと、この経験を伝えていきたいと考えています。

志賀 YouTubeで社外の方も視聴できます。インターネット時代にふさわしい、良い取り組みですね。現場の過酷さは相当なものだったのではないでしょうか。 松田 これまで北陸地方は、比較的自然災害が少ない地域と言われていました。われわれが全国の災害現場に駆け付けることはありましたが、誰もが身をもって経験したことのない「未曾有の災害」で24年が始まりました。平常時と違う状況の中で、電気は人びとの生活や産業を支える大事な役割を担うだけでなく、明かりが灯ることで震災からの不安を和らげる意味もあります。ただでさえ極寒の季節である上に、現場は寝るところもトイレもない困難な作業環境でしたが、北陸電力グループが一丸となってこの大きな試練を乗り越え、安全を確保しつつ一刻も早く電気をお届けするという強い覚悟を元日早々に決めました。


災害対応の課題を検証 知見を広く共有

志賀 さらに同年9月には、豪雨災害も奥能登を襲いました。復旧状況はいかがでしょうか。

松田 復旧は「こころをひとつに能登」のスローガンの下、グループ一丸となって対応してきました。地震で延べ約7万戸の停電が発生しましたが、停電復旧はまず自治体の災害復旧拠点や病院、福祉施設、避難所などを優先し、全体としては1カ月で概ね電気をお届けすることが出来ました。その後、追い打ちをかけるように9月に豪雨災害が発生しました。これにより、能登地域を中心に延べ約1万1000戸の停電が発生。作業は洪水や浸水による泥との戦いとなりました。地震により約3000本、豪雨によりさらに約300本の計約3300本の電柱に被害が発生しました。これまでに、約1000本の対応を終えていますが、今後は、残された2300本ほどの電柱の本格復旧に取り組むことになります。道路状況などに併せて復旧を進める必要があり、長丁場になることが予想されます。自治体や関係機関と連携しながら、着実に本格復旧を進めていきます。

奥能登では地震に続いて豪雨災害からの復旧に尽力した

災害で多くの苦労もありましたが、多くの知見を得ることもできました。「電気が復旧して良かった」で終わるわけにはいきません。現在、災害対応をハード面だけではなく、後方支援や関係機関との連携などソフト面も整備して災害対応力の強化を図っています。また、この知見を全国に共有していくことも当社の使命です。

志賀 震災から2度目の冬を迎えました。供給力の面で懸念はありますか。

松田 地震で被災した七尾大田火力発電所(石川県七尾市)は、 石炭払出機の倒壊や、広範囲にわたるボイラー管の損傷など、甚大な被害が発生しました。協力会社やメーカーを含め最大900人体制で復旧作業に当たり、2号機は昨年5月10日に、1号機は定検期間中の7月2日に運転を再開し、目標としていた夏季の高需要期までの復旧を成し遂げました。今冬についても、計画外のトラブルや災害への備えなど緊張感を持って、万全な供給体制を確保しています。

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