【特集2】省エネ機器販売で一段と成長 スマートリモコンで最適運用

2025年2月3日

ハイブリッド給湯器などの家庭用機器が強みのニチガス。プラットフォーム事業の拡大も狙う同社の戦略に迫った。

【インタビュー】土屋友紀・日本瓦斯代表取締役専務執行役員営業本部本部長

―カーボンニュートラル実現の要請が強まる中、家庭用の取り組みはどうですか。

土屋 当社の特徴は、省エネ性能に優れたハイブリッド給湯器を日本で一番積極的に販売している点です。太陽光発電パネルや、最近では家庭用の蓄電池の販売も進めています。価格だけでなく、必要な情報と選択肢をお客さまに提供し、電気のお客さま数も6年間で37万件(2024年1月現在)に達しました。

 当社はガスの供給事業者であり、電気の供給事業者でもあります。AIが需要を精緻に予測・制御することで、家庭のエネルギー利用を最適化するDR(デマンドレスポンス)運用において、家庭用省エネ機器を販売した実績は大きな強みになると考えています。

 家庭用のエネルギー使用量を見える化し、お客さまが機器を遠隔で制御できる「スマートリモコン」を開発中です。家庭用の機器をネットワークにつなぐことで、利便性を高めながらエネルギーの最適利用を目指しています。例えば、ハイブリッド給湯器はガスと電気の両方でお湯を作れますので、電力需給がひっ迫した時はガスでお湯を作り、再エネの余剰電力が生じたときはヒートポンプでお湯を沸かすという運用も可能です。これらは家庭用分野におけるエネルギーの最適利用を実現するプラットフォームとして多くの事業者にも展開し、社会課題解決にも貢献したい。

―昨年、LPガスのお客さま数が100万件を突破しました。こうした取り組みを通じて物流改革を後押しされていますね。

土屋 2010年頃からデポステーション(24時間無人で稼働可能なLPガスの容器置き場)を設け、配送に関わるコストを削減し、ガス料金の低価格化を進めました。21年には世界最大規模のLPガスハブ充填基地「夢の絆」を稼働させました。LPガス物流のプラットフォームです。利用者が増えれば増えるほど、配送に関わるコストとCO2を業界全体で減らすことができ、消費者に還元できます。

―顧客拡大に向けた今後の目標は。

土屋 全社で掲げる目標は電気、ガスの総契約数200万件で、今期中の達成を見込んでいます。すでにLPガス、電気、都市ガスのエネルギーの垣根はなくなっています。当社は同業者および他のエネルギー事業とのアライアンスや水平分業を進め、業界全体で効率化の実績を積み上げています。また、最前線の営業現場を尊重し、お客さまにどのようなサービスが提供できるかという考え方で取り組み、当社のDNAである「同じ成功は繰り返さない」の精神で変わり続けていきます。

つちや・とものり 1993年ニチガス入社。同社常務執行役員や東彩ガス代表取締役社長などを経て、23年4月ニチガス専務執行役員。24年6月から現職。