【特集2】エネシステム確立に功績 実験集合住宅30年の挑戦
【大阪ガス】
大阪ガスの実験集合住宅「NEXT 21」が立ち上げから30周年を迎えた。同社社員が実際に居住し、数々の成果を上げてきた軌跡を振り返る。
大阪ガス社員自らが被験者となり、環境、エネルギー、暮らしに関するさまざまな実験に取り組む実験集合住宅「NEXT21」が居住実験開始から30周年を迎えた。同プロジェクトの開始は1990年2月。内田祥哉東京大学名誉教授を委員長に据えた計画委員会を立ち上げ、議論・検討が行われた。エナジーソリューション事業部計画部環境・政策チームの志波徹氏は「委員会では、『建物はすぐ陳腐化する。自ら変化できるものを目指すべき』といった内容から、『外観は地域との調和が必要であり周辺住民の皆さんに了解を得ないといけない』、『植栽は周辺公園と同じ植物で渡り鳥が来るようなものを』とエネルギー以外にも議論は多岐に及んだ」と当時の様子を語る。
議論を経て、建築には「スケルトン・インフィル方式」を採用した。同方式は建物の骨組みを頑丈につくり、内部を柔軟に改修可能にするもので、用途や住戸間の面積の変更が容易。かつ長寿命で持続可能な建物運用を実現させる。また、共用廊下や配管スペースは再設計でき技術革新に対応できる構造だ。この柔軟な仕組みによって、環境、エネルギー、暮らし、それぞれのテーマで、時代の先を行く実験が可能な舞台が完成した。
時代に即した設備選定 エネファームで電力融通
NEXT21ではこれまで五つのフェーズで実験が行われた。エネルギーの側面で時代を大別すると、第1~2フェーズ(93年~2007年)の初期はセントラル方式、第3フェーズ以降(07年〜現在)は戸別分散方式の設備を採用している。初期にセントラル方式を採用したのは、①住戸周辺に機器を設置しないため間取りの自由度が高く意匠性に優れている、②平準化できるので1戸当たりの設備容量を小さくできる―などの利点があるためだ。将来的に設備の効率の改善が進めば、近未来住宅のエネルギーシステムになり得ると想定した。第1フェーズではリン酸形燃料電池を設置。稼働中は系統からの電気を使用せず、全てガスで賄うオールガス住宅を目指した。

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