【特集2】製造装置の信頼性が顧客に好評 e‐メタン利用も武器に市場開拓
【大阪ガス】
水素は次世代エネルギーとして期待が高まる一方で、産業用ガスとして利用する歴史が長い。同用途向けに大阪ガスが2003年度に発表したのがコンパクト水素製造装置「HYSERVE」シリーズだ。エンジニアリング部の池田耕一郎課長は「プラント型の大型設備と比較して価格とスペース設置を従来の半分にしながら、運用面ではボタン一つで起動・停止が可能、遠隔監視による無人運転もできる製品に仕上げた」と話す。
低コストと省スペースの実現に寄与したのが独自の触媒などの技術だ。水素製造では、まず、13A都市ガスやLPガスから付臭剤を除去。これには「超高次脱硫剤」を使用する。ガスの改質工程では、「水蒸気改質触媒」でH2を主成分とする合成ガスに改質する。さらに、この合成ガス中のCOをH2に転化。同工程に「CO変成触媒」を用いる。最後に、水素PSA工程で不純ガスを除去し高純度のH2だけを送出するなど、各工程で貢献する。
23年9月には、同シリーズで最大能力を持つ「HYSERVE―300X」を発売。従来機を改良し、さらなるコストダウンと設置面積縮小を図った。水素製造では300N㎥時の能力を維持しながら、原料から水素を生み出す改質効率は最高レベルを実現。99・999%の高純度で水素を製造する。装置の縮小化では、製造フローを見直し、構成機器の削減を図りコストを低減しつつ、従来機より設置面積を約40%縮小した。
ものづくりの現場で採用 ライセンスで海外にも展開
国内で同装置を導入するのは、ものづくり分野の顧客がメインだ。累計で約40台販売実績がある。産業用ガス向けに販売やエンジニアリングを手掛ける大阪ガスリキッド水素ソリューション部の杉田雅紀部長は「当社の安心手間いらずのサービスが、製品の製造工程で水素供給を止められない、24時間連続で使用する企業など、高い信頼性を求めるお客さまに支持されている。水素ステーション(ST)用途でも導入実績がある」と語る。
海外にも展開中だ。韓国ヒュンダイモーターグループに同装置の韓国国内での製造と日本以外への販売に関するライセンス供与を行っており、韓国はもとよりアジア圏もターゲットにしている。Daigasガスアンドパワーソリューション海外営業チームの徳田氏忠士マネジャーは「韓国で燃料電池車(FCV)は約2万台販売され、FCバスも定期運行する。水素ST向けの同装置の稼働率は日本国内の装置と比較にならないレベルで高い」と話す。また、アジアでは台湾などがカーボンニュートラルに向けて水素利用の検討を進めており、同装置の導入も候補に上がっている。
同装置は、都市ガスやプロパンのほか、バイオガス由来のメタンガスやe―メタンを使用することもできる。クリーンな水素製造が可能だ。今後、活躍の場をさらに広げていく。
