【特集2】大規模サプライチェーン構築へ 環境と経済の好循環を目指す
【北九州市】
産業の集積地であり、水素の持つ可能性に早くから注目してきた北九州市。同市は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、「北九州市グリーン成長戦略」を策定。環境と経済の好循環を目指し、産業の創出や企業の競争力強化につながる新たな成長を志向している。
この一環として、八幡東区東田地区の水素実証では、市道に敷設した約1・2kmの水素パイプラインにより、工場から水素実証住宅への安定的な水素供給を実現している。具体的には、日本製鉄(旧新日鉄住金)八幡製鉄所の副生水素を集合住宅や公共施設などに設置した純水素型燃料電池に供給し、得られた電力や熱を利用した。
水素をパイプラインで供給する場合、ガス事業法が適用される。北九州市の取り組みは実証実験のため適用対象外になったが、将来の実用化に備えて、ガス事業法の基準にのっとった形で運用した。実証中に、漏えいなどの事故は全く発生せず、都市ガスに準じた方法で水素のパイプライン供給が安全に行われることが証明された。
臨海部でプロジェクト始動 30年の本格稼働を予定
さらに、響灘臨海部で水素の大規模な供給・利活用拠点を構築するプロジェクトが昨年6月に始動した。この水素サプライチェーンは30年本格稼働を予定し、同年に年間9万tの水素需要が見込まれている。
このプロジェクトを推進するのは、23年5月に設立された福岡県水素拠点化推進協議会で、県や北九州市のほか、水素の利活用を目指す企業で構成されている。全体の取りまとめ役は伊藤忠商事で、供給側として日本コークス工業(アンモニア貯蔵・クラッキングなど)や日鉄エンジニアリング(パイプライン敷設など)、需要家として九州電力(発電所での水素混焼)やジャパンウェイスト(燃料電池フォークリフトでの利用)などが参画する。九州電力は、双日や日本郵船と連携しインドから年間20万tのグリーンアンモニアを調達。日本コークス工業のタンクに貯蔵し、そこからパイプラインで近隣の需要家に供給するほか、クラッキングで水素を製造し供給する予定だ。
北九州市環境局グリーン成長推進部グリーン成長推進課の香月勇磨主任は「価格面、インフラ面での課題が解決すれば、水素は非常に魅力的な資源。水素の持つ力で脱炭素化を進め、北九州市の国際競争力を向上させたい」と意気込む。水素拠点の本格稼働が今から待ち遠しい。
