【メディア論評/3月5日】第七次エネ基などを巡る報道を読む〈下編〉第七次が示した多くの課題

2025年3月5日

地球温暖化対策計画は、2050年カーボンニュートラルに向けて温室効果ガスを35年度、40年度において、それぞれ13年度から60%、73%削減することを目指すとした。一方、第七次エネルギー基本計画では、「40年に向けた政策の方向性」として、大きく「需要側の省エネルギー・非化石転換」と「脱炭素電源の拡大と系統整備」などに分けて論じられ、後者に関する項目は多岐にわたる。

●脱炭素電源の拡大と系統整備

・再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス)

・原子力発電

・火力発電とその脱炭素化(LNG火力、石炭火力、石油など火力)

・次世代電力ネットワークの構築(電力ネットワークの増強、系統・需給運用の高度化)

●次世代エネルギーの確保/供給体制(水素、アンモニア、合成メタンなど、バイオ燃料、合成燃料)

●化石資源の確保/供給体制 (天然ガス、石油、LPガス、石炭)

●CO2回収・有効利用・貯留

高い削減目標のために掲げられた各ジャンルの課題進捗・政策対応は、その目標上昇のスピードに追い付けず、今後の展開は不透明さを増している。ここでは、上記のような多岐にわたる個々のテーマの課題に関する記事・論考は紹介しきれないため、大きな流れを論じたものを中心に紹介させていただく。なお、エネルギーフォーラム2月号は、〈移行期の難しさが随所で噴出〈個別4分野の現在地を検証〉と題して、洋上風力発電、原子力発電、火力発電、次世代燃料を取り上げて、現状を解説している。

参考=洋上風力発電については、週刊ダイヤモンド25年2月8日・15日合併号「洋上風力クライシス」と題して、記者のエネルギー、商社、ゼネコンなどの業界への長期にわたる取材をもとに特集記事を掲載している。

◆需要側の省エネ・非化石転換

第七次エネルギー基本計画の概要より(抜粋)

足下、DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれており、半導体の省エネ性能の向上、光電融合など最先端技術の開発・活用、これによるデータセンターの効率改善を進める。工場などでの先端設備へのさら新支援を行うとともに、高性能な窓・給湯機の普及など、住宅などの省エネ化を制度・支援の両面から推進する。

参考=25年1月10日総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会資料「さらなる省エネ・非化石転換・DRの促進に向けた政策について」より

データセンター業のさらなる効率化に向けた取組(案)  (抜粋)

◇DCの最大限立地のために、電源の確保と合わせてDC自身のさらなる効率化を促す。具体的には、利用可能な効率化に資する技術の着実な実装および最先端技術の開発・社会実装の加速を図る。

情報処理技術のイノベーション

●半導体の微細化技術

微細化によって情報処理のエネルギー効率は飛躍的に向上

●光電融合 電子デバイスの電気配線を光配線に置き換える技術

省エネ化・大容量化・低遅延化を実現 

ネットワークシステム全体で電力消費100分の1

●情報処理効率の向上に向けたチップ進化及び先端実装

効率的なAIの計算のために、専用GPU(画像処理に特化した半導体チップGraphics Processing Unit)に転換       

◎朝日新聞デジタル24年11月28日付(抜粋)橘川武郎国際大学学長

Q:AIの普及など電力需要の増加で原発が欠かせないとする意見が支配的です。

A:電気が足りない=原発が必要、と考えてしまうのが間違いです。私はこうした考え方から抜け出せないことを“原発脳”と呼んでいます。米IT大手による原発の電気の購入が引き合いに出されていますが、彼らはより多くの再エネ電気を調達していますし、原発はつなぎと位置付けている、と私は見ていますまた需要が本当に増え続けるのかも精査すべきです。40年頃までは増えるでしょうが、その後はNTTのIOWN(光電融合)など省エネ技術が期待でき、需要は減っていく可能性があります。

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