【コラム/3月24日】激動の2024年度から実行の2025年度へ
足元から将来の制度設計に係る議論も多数
その他、多くの制度設計が例年通り、行われることが予想される。
供給側では、24年度に契約発効が始まった容量市場の実効性の検証や、約定価格高騰、供給信頼度の低下しているエリアの存在、今後の電力需要増加への対応といった論点についての検討が行われるだろう。長期脱炭素電源オークションでは1月に応札が行われた第2回入札の結果が出ることから、その検証と第3回に向けた準備を進めることとなる。また、予備電源は、初回入札の応札者ゼロの状況を改善するために、発電事業者へのヒアリングを踏まえた見直しを図っており、第2回入札の準備が行われることとなる。
電源では、再エネについて、自立化に向けた価格目標の設定やFIP活性化のための各施策(併設蓄電池の系統充電対象の拡充、優先給電ルールの順番変更、バランシングコスト増額、非FIT非化石証書の直接販売対象電源の拡充など)の準備・実行、FIT・FIP屋根置き太陽光の初期投資支援スキームの開始(25年10月申請分以降)、洋上風力発電の事業完遂に向けた施策(価格調整スキーム、EEZ展開を可能とする法案の審議、第4ラウンドの公募、セントラル方式の確立、ゼロプレミアム案件の容量市場への参加など)の検討・実行、次世代技術開発(ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力発電、次世代地熱発電)の実証・実装に向けた活動、太陽光パネルのリサイクル制度の検討など、多くの施策が行われることとなる。
原子力発電については、既設炉の最大活用として、再稼働対応がどこまで進展するかが着目される。特に、東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所の再稼働については、提出が遅れている第5次総合特別事業計画における事業戦略や厳しさを増すフリーキャッシュフローの確保に大きく影響を及ぼすことから、国も前面に立って取組を後押しすることが求められる。また、エネルギー基本計画にも記載があり、それまでの議論でも何度も指摘されているサプライチェーン及び人材の維持・強化は不可欠で、原子力発電事業の将来像や数値的な目標を提示していくことも必要になるだろう。
火力発電については、LNG火力をトランジション電源として活用するために、平時・有事における燃料確保と併せた対応が求められる。そして、その裏側にある小売電気事業者側での供給量(kWh)確保のための制度的措置や役割の明確化は電力システム改革検証でも言及されており、この2025年内の制度改正議論の中でも大きな論点として議論されることが予想される。石炭火力、石油火力においても、脱炭素化という目標があるものの、一足飛びの改革は困難であることから、現実路線での対応が求められる。
系統側では、まずは広域系統マスタープランで計画された北海道本州間連系線(日本海側)の実施案の提出期限が年内で、中国九州間連系線では実施案の評価と事業者、受益者の選定が行われる予定となっている。2つのプロジェクトはともに、多額の費用と長い建設リードタイム、資金回収期間の長さ、大規模プロジェクトゆえのリスクの多さ、資金調達の難しさ(特に北海道本州間ではプロジェクトファイナンスを想定しているため)など、課題は山積しており、そうした課題について制度的措置を講じながら、選定された事業実施主体による着実な工事、供用開始に繋げなければならない。なお、広域系統マスタープランは、将来の電力需要見通しや電源構成の変化を踏まえ、見直しを図る予定となっている。
また、データセンターや半導体工場の新規接続の申込が増える見通しであることから、局地的大規模需要対策も課題となっており、先着優先のあり方、設備形成・費用負担のあり方、設備の最大活用といった3つの論点について具体的な対応の検討に着手したところであり、上述した「ワット・ビット連携」の議論と整合を取りながら対応を図ることになるだろう。
系統においては増強だけでなく、運用面においても対策が必要となる。再エネの導入拡大などで起こるエリア需給バランスの維持やノンファーム型接続の増加に伴い発生する系統混雑解消は、今後発生頻度や量が増える可能性が高い。分散型エネルギーリソースの活用や連系線・基幹系統の増強・運用容量見直し、再給電方式など、引き続き現行の対策を講じつつ、さらなる有効策がないか検討を進めていくことになる。
そして、調整力確保においては、24年度から全商品で取引が開始した需給調整市場での低い約定率を解消するために、暫定的な応急措置として募集量の最適化を図っているところであるが、一方で、応募量が増えなければそのうち限界も来るため、制度的な供出義務を含めた対策が検討されており、順次適用されることになるだろう。26年度からは低圧リソースや機器個別計測での取引や、全商品の前日取引化など、大きな変更が予定されており、25年度はそのための手続やシステム、詳細ルールを記したガイドライン整備などの準備に追われることになるだろう。