【特集2】運輸CN移行期の主役なるか 国を挙げて導入拡大に本腰

2025年4月3日

第7次エネ基で具体的な導入目標が示されたバイオエタノール。
導入拡大に向けた制度や行動計画の検討が始まっている。

カーボンニュートラル(CN)の実現には、国内のCO2排出量の2割弱を占める運輸部門での取り組みが不可欠だ。液体燃料(ガソリン)の脱炭素化に向けては合成燃料(eフューエル)に期待がかかる。だが、製造技術の開発や原料となる水素の調達などに課題を残しており、商用化までには相当の時間を要する。こうした状況下で、燃料に入れた分だけCO2を削減できる「即効性」を持つバイオエタノールの導入拡大を官民で後押しする機運が高まっている。

直接混合が世界の主力 供給インフラ整備が課題

昨年6月に資源エネルギー庁や関係企業、シンクタンクなどで構成される「合成燃料の導入促進に向けた官民協議会」による合同WGで合成燃料の導入拡大について検討されたことを皮切りに、議論が本格化した。11月に実施された審議会ではガソリンへのバイオエタノール導入拡大に向けた方針を策定。これを基に作成された第7次エネルギー基本計画では、2030年度までに最大濃度10%、40年度から同20%の低炭素ガソリンの供給を開始するとの目標が明記された。並行して30年代の早期にE20対応車の新車販売比率を100%にすることで「E20レディ」を進める方針が示されるなど、バイオエタノールを巡る状況はこの半年で大きな動きを見せている。 

エネ庁資源・燃料部燃料供給基盤整備課の永井岳彦課長は「バイオエタノールはガソリンのCN化に向けた『移行期燃料』として重要。以前からその重要性を発信していたが、エネ基に明記されたことで導入拡大の機運が高まっている」と説明。続けて「エタノールの製造技術は既に確立しており、E10までであれば燃料規格なども定まっていることから、比較的早期の導入が可能。CO2削減に即効性があることに加え、合成燃料とも併用できるため、長期間にわたってベース燃料として機能する」とそのポテンシャルを強調した。

調達先は依然としてアメリカやブラジルが有力だ。日本の自給率は0%であるため、安定的なサプライチェーンの構築にはこれら関係国との資源外交を円滑に進めることが欠かせない。昨年5月には、ブラジルの首都ブラジリアで岸田文雄前首相とルラ・ダシルバ大統領による首脳会談が行われ、主に自動車分野の脱炭素化に向けて両国が包括的に協力し合うことなどが確認された。また、2月に行われた日米首脳会談後の合同記者会見で、石破茂首相は「LNGのみならず、バイオエタノールやアンモニアといった資源を、(アメリカから)安定的にリーズナブルな価格で提供されることは日本にとっての利益になる」と述べ、安定供給先の確保に向けた連携強化を着々と進めている。

焦点となるのはガソリンへの混合方式だ。これまでは石油由来のイソブテンをバイオエタノールに混ぜたETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を利用してきた。水と混和しにくいことや揮発しにくい特徴を持つなど、扱いやすさで優れていたためだ。ただ、エタノールを二次加工する必要があり、原料のイソブテンはガソリン製造時などに生じる副産物であることから増産に向いていない。こうした状況下で、政府は「直接混合」を導入する方針を打ち出している。安価での量産が可能なバイオエタノールをそのまま混ぜることで、ガソリンの脱炭素化を効率的に進めていく狙いだ。  

直接混合は近年、フランスをはじめとするEU諸国でもETBEからシフトする動きが活発になるなど、世界的にも主流になりつつある。だが、国内での導入拡大には課題が残る。
中でも懸念事項となっているのが供給インフラの整備だ。水層と油層への層分離を起こさないための水分混入対策に加え、アルミやゴムなどの部材腐食防止策が必須となる。ほかにも、ブレンディングタンクの新設やSS(サービスステーション)内の計量器の改良など、大規模な設備投資が求められる。

ガソリンのCN化イメージ
提供:資源エネルギー庁

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