【特集2】穀物生産大国が存在感を発揮 陸と空の脱炭素化で攻勢かける

2025年4月3日

トウモロコシ生産量が世界最大の米国がエタノール外交に意欲的だ。
運輸部門で勝負をかける狙いは何なのか、現地を取材した。

世界最大のトウモロコシ生産量を誇る米国が、穀物由来のバイオエタノールを運輸部門でさらに広げようと躍起になっている。全米でエタノール混合の自動車燃料の拡大に取り組むとともに、自国産のエタノールを航空業界の脱炭素化を促すSAF(持続可能な航空燃料)の原料として輸出することにも意欲を示す。陸と空で市場開拓を狙うエタノール生産大国を取材した。

日米首脳会談で焦点に 穀物農家の所得安定化へ

「われわれの農業州が非常に喜ぶことになるだろう」
トランプ米大統領は2月に行われた石破茂首相との共同記者会見でバイオエタノール原料を生産する農家に触れながら、エタノールを適正価格で安定的に提供する考えを示した。日米でエネルギー安全保障の強化に向けて協力していくことを確認した首脳会談後の一幕だ。

トランプ氏の発言の背景には、トウモロコシに含まれるでんぷんを糖化後に発酵を経て得られるエタノールの生産で世界をリードしてきた実績がある。2023年の生産量は約6000万㎘で、世界全体の5割超を占めた。トウモロコシの単収も年々増えている状況だ。

そもそもトウモロコシ由来エタノールの生産は、05年成立のエネルギー政策法に再生可能燃料の使用量を定めた「再生可能燃料基準」に盛り込まれたことを機に本格化。その後も政策を追い風にエタノール産業が成長を続け、穀物農家の所得の安定化につながった。トランプ氏の姿勢からは、支持者が多い農業に配慮したいという政治的な意図も透けて見える。

エタノール生産の効率化に向けた研究にも余念がない。イリノイ州にある国立トウモロコシ・エタノール研究センターを訪ねると、生産に必要な設備やタンクが所狭しに並んでいた。
農業と一体となったエネルギー政策を追い風に全米に浸透したのが、エタノールを10%混合したガソリン「E10」だ。再生可能燃料協会(RFA) によると、ガソリン総量に占めるエタノールの使用割合は14年に9・83%を記録。その後も上昇を続け、23年には10・42%に到達した。「E85」を扱うスタンドが約5900カ所になるなど、エタノール混合比率を高めた店舗も拡大している。

RFA がエタノールに対する好感度を把握しようと約1800人を対象に24年9月に調査した結果、58%が「肯定的」と答え、18%の「否定的」を大きく上回った。消費者を魅了したのは、異常燃焼の起こりにくさを示す指標「オクタン価」が高く低炭素という利点だけではない。RFAで法務担当最高責任者を務めるエドワード・ハバード氏は、価格がレギュラーガソリンを下回るというエタノール混合ガソリンの優位性にも着目し、「消費者の節約への貢献が、混合ガソリンが広がる原動力になった」と分析する。

「地球と国を守る」―。シカゴ近郊にあるパワーエナジーグループのガソリンスタンドを訪れると、クリーン燃料を売り込む看板が目に飛び込んできた。E10以外にも4種類のエタノール混合ガソリンを販売するスタンドだ。一方で車の電動化などに伴いガソリン消費の減少が続く中、トウモロコシ農家などから懸念の声も聞こえている。そうした中で急浮上してきたのが、新規用途のSAFだ。

エタノール混合ガソリンを販売するシカゴ近郊のスタンド

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