【電力中央研究所 平岩理事長】持続可能な未来に向け 研究成果を創出し社会実装を目指す

2025年4月1日

第7次エネ基策定を受けて電気事業への関心が高まる中、「サステナブルなエネルギーで支える安全で豊かな社会」の実現に向けたさまざまな研究開発を進めている。

外部機関との連携や分かりやすい情報発信にも力を入れ、電気事業の発展に貢献する。

【インタビュー:平岩芳朗/電力中央研究所理事長】

ひらいわ・よしろう 1984年東京大学大学院工学系研究科電気工学専門課程修了、中部電力入社。取締役専務執行役員、取締役副社長執行役員、送配電網協議会理事・事務局長などを経て2023年6月から現職。

志賀 第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。全体的な評価を教えてください。

平岩 国際情勢の不安定化を背景にエネルギー安全保障の重要性が高まる一方で、データセンターなどに伴う電力需要増加が見込まれています。こうした国内外の情勢変化を踏まえ、カーボンニュートラル(CN)に向けた野心的目標を掲げつつも、安定供給を第一とし、現実的なトランジション(移行)の重要性を示すなど、現実的な計画であると評価しています。

志賀 2040年度のエネルギー需給見通しでは複数シナリオが提示されました。

平岩 革新的技術の不透明性を念頭にリスクケースへの備えの必要性を示したことは、安定供給の重要性を強く認識している表れでしょう。GX(グリーントランスフォーメーション)2040ビジョンとの一体性が強調された点も重要です。DX(デジタルトランスフォーメーション)、GXの進展による経済成長、産業競争力強化の実現とCNに向けたエネルギー政策は密接に関係します。


投資への手当て必要 再エネ運用の合理化を

志賀 電源構成の点ではどうですか。

平岩 エネルギー安全保障に寄与する脱炭素電源として、再生可能エネルギーと原子力発電を最大限活用することを明記し、二項対立から脱却した点と、トランジション手段としてのLNG火力の重要性を化石燃料確保の必要性と合わせて強調した点は、ベストミックスの重要性を再認識したものとして意義があると思います。

志賀 再エネの主力電源化に向けて、統合コストという概念も盛り込まれましたね。

平岩 総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)発電コスト検証ワーキンググループの電源コスト試算を踏まえ、調整力確保など変動性再エネを電力システムに受け入れるために必要な統合コストの一部を、エネルギーミックスの検討において算定し評価している点は、国民負担を極力抑え、合理的な供給システムの構築を目指しているものと評価しています。

志賀 洋上風力はCN実現に向けた切り札とされていますが、開発コストの上昇などで先行きは不透明です。

平岩 物価上昇と日本近海での施工環境などから、開発コストと建設の動向を注視しています。再エネが集積する地域にデータセンターなどの需要を立地誘導することで、系統設備の稼働率を高め規模を適正化するという考えが現実的になる中で、電力広域的運営推進機関で広域連系系統のマスタープラン見直しの要否が検討されていることは、重要な動きととらえています。

志賀 エネ基ではS+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)の重要性が再確認されていますが、このために電力システム全体で必要なことは何ですか。

平岩 大量の変動性再エネを電力システムに受け入れ、安定運用するためには、電源や需要も含めた電力システム全体を俯瞰した合理的かつ計画的なネットワークの設備形成と運用技術、および制度設計が肝要です。

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