【電力中央研究所 平岩理事長】持続可能な未来に向け 研究成果を創出し社会実装を目指す

2025年4月1日

志賀 エネ基でうたわれた原子力の最大限活用に向けて、電中研として取り組んでいることはありますか。

平岩 ①再稼働対応、②長期運転、③次世代革新炉─という三つのテーマで取り組んでいます。再稼働対応では新規制基準適合性審査で論点となる断層の活動性について、我孫子地区の研究者らがヘリカルⅩ線CTや透過型電子顕微鏡などを用いたボーリングコアの観察結果に基づく評価を行い、電気事業者の規制対応を側面支援しています。

長期運転への貢献では、透過型電子顕微鏡や、材料の組成などを原子レベルで三次元的に解析する「アトムプローブトモグラフィ」という装置を用いて、中性子照射した材料の組織変化をナノレベルで検証しています。また、原子炉圧力容器内に装荷されている脆化量測定用の試験片の有効活用を目的とした、超小型試験片を用いた脆化評価法の開発にも取り組んでいます。

アトムプローブトモグラフィ装置

次世代革新炉については、導入に向けて解決すべき安全性の確認や、経済性評価に活用する計算プログラムの開発に必要な炉心シミュレータの解析技術やモデルの整備、浮体式や地下立地の技術的成立性の確認などを進めています。また、革新軽水炉の早期導入に向けては、欧米での審査の論点や規制の近代化、安全評価手法の高度化の動向などを調査しています。


5年ぶりに中計策定 七つの目標を設定

志賀 昨年、新たに中期経営計画を策定しましたね。

平岩 前回計画策定時には想定できなかった社会や電気事業を取り巻く大きな情勢変化を受け、5年ぶりに策定しました。研究成果の社会実装や情報発信の重要性も示しています。

当所のミッション(果たすべき使命)、ビジョン(ありたい姿)、バリュー(大切にする価値観)を再定義し、50年に日本がありたい姿として「サステナブルなエネルギーで支える安全で豊かな社会」を掲げ、それを実現するための七つの目標を設定しました。この目標に向けて、15の「2035年に向けた研究開発の道筋」と「各道筋における取組内容」を取りまとめ、この道筋に沿って事業を進めるための今後5年間の事業運営の基本となる指針を定めました。社会実装も想定した外部機関との連携とそのための接点拡大には、当所の存在価値や研究の方向性を理解していただくことが必要との考えから、今回からウェブサイトなどで概要を公開しています。

志賀「2035年に向けた研究開発の道筋」の代表的な取り組みを教えてください。

平岩 七つの目標の一つである「ゼロエミッション火力の実現」に向けては、バイオマス燃料の自然発熱現象の解明や発熱監視技術の開発、アンモニア混焼導入時の腐食環境評価手法の開発、CO2分離回収技術導入時のシステム性能(発電出力、熱効率、CO2回収量)や運用性(負荷追従性、部分負荷性能)評価手法の開発などを行っています。

志賀 系統に関わる研究開発はいかがですか。

平岩「広域連系系統の強化と安定運用」に向けては、合理的な需給や系統利用を実現するために、広域LFC(負荷周波数制御)手法や発電機起動停止計画策定機能の開発、発電機指令用通信仕様の策定に取り組んでいます。発電機起動停止計画については、国の「同時市場の在り方等に関する検討会」での同時市場における電源起動・出力配分ロジックの技術検証において、最適化ロジック検証のシミュレーションを実施しています。これらは一般送配電事業者による次期中央給電指令所システムの共同開発に貢献するものです。

また「地域エネルギーグリッドの実現」に向けては、地域におけるエネルギーや関連情報の取引、サービスを柔軟に提供する技術を実現すべく、DER(分散型エネルギー資源)を活用した次世代地域グリッド解析・評価プログラム群の開発などを進めています。

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