「第2世代」燃料の製造技術を研究 未利用作物の有効活用を目指す
【次世代グリーンCO2燃料技術研究組合】
自動車分野のCO2排出量低減に向け、非可食植物由来のバイオエタノール燃料への注目が高まっている。従来のバイオエタノールが原料とするサトウキビやトウモロコシなどの可食作物を使用しないことから「第2世代」と呼ばれ、世界的な人口増加に伴う食糧問題ともバッティングしない。その第2世代の開発において最先端を走るのが、「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」(福島県大熊町)だ。

同組合の設立を先導したのはトヨタ自動車。液体燃料(ガソリン)の脱炭素化を見据えバイオ燃料の研究を進めていた同社が、さらなる研究開発の促進を目的に、エネルギー業界からENEOS、自動車業界からスズキ、SUBARU、ダイハツ工業など5社に呼びかけ、2022年7月に設立した。23年3月にはマツダも加わり、現在は7社で構成されている。
研究開発拠点となる製造プラントは福島県大熊西工業団地に建設された。同じ浜通りにある浪江町に原料となるイネ科植物のソルガムを栽培する条件が整っていたことや、福島の復興に貢献したいという思いがその背景にある。昨年11月にしゅん工し、現在は本格稼働に向けた試運転を行っている。
独自酵母で生産性を向上 さらなる技術開発にも意欲
非可食植物の利用には、セルロースなどの繊維質を柔らかくする前処理工程が必要となる。糖化を促す酵素を繊維質内に入り込みやすくするためだ。同プラントでは、不純物を取り除いて圧搾したソルガムを蒸煮し、その後高温の水蒸気によって繊維質を砕くプロセスを確立した。前処理を終えたソルガムは、酵素によって糖化し、トヨタが独自開発した酵母菌「TOYOTA XyloAce」と反応することで発酵する。同酵母菌は、自然界では発酵が難しいキシロースをエタノールに変換することが特徴だ。これにより植物由来の繊維質のエタノール生成量は従来の1・5倍になった。
また、発酵時に発生するCO2を活用するため、ENEOSの合成燃料プラント(横浜市)に輸送する体制を整えた。
中田浩一理事長は「ソルガムの活用で得られた知見をほかの未利用バイオマスにも展開していきたい」と話し、よりCO2排出量が少なく、効率的なバイオエタノール製造への意欲を示した。