【現地ルポ/4月25日】下北の原子燃料サイクル施設〈後編〉六ヶ所再処理工場の最新事情

2025年4月25日

◆原子力を持続可能にするために「これ以上遅らせない」覚悟で

日本で原子力発電の運用が続く限り、それを支える原子燃料サイクルの仕組みが不可欠だ。その技術が集約される日本原燃の施設はどこもその巨大さ、新しさが印象に残るものだった。設備や技術は日々進化し、安全性も向上している。原子燃料サイクルが機能してこそ国の原子力政策は真の意味で国益をもたらすものになる。そのためには、地元の青森県をはじめとする自治体や県民との信頼・協力関係が欠かせない。日本原燃は、地域産業の活性化に協力するとともに、住民との交流にも力を入れている。「日本原燃さんの施設がなければ、六ヶ所村は本当に衰退していたと思いますよ」。乗車したタクシーの運転手は雑談の中で、こんな感想を漏らした。

日本原燃のマスコットキャラ「ツカエルくん」のアクセサリー。これも地域交流の一環だ

再処理工場の稼働については、これまで27回も延期された経緯があるだけに、エネルギー業界内外やメディア関係者の多くが「2026年度中のしゅん工も難しいのでは」とみている側面は否定できない。しかし、日本原燃では「これ以上、しゅん工を遅らせることはできない」(2月27日の会見で増田尚宏社長)との覚悟で、最終局面の作業に取り組んでいる。

エネルギーフォーラム取材班が訪れた4日後の21日、福井県の杉本達治知事がこの原子燃料サイクル施設を視察した。同施設は、関西電力の美浜、大飯、高浜の原子力発電所から出る使用済み燃料の主な搬出先とされている。報道などによれば、知事は会見で、「核燃料サイクルの重要な鍵を握る施設であり、関電の使用済み燃料の搬出計画を踏まえ、増田社長には事業者が協力しながら(26年度内の再処理工場しゅん工)目標を守るよう全力を尽くすことを強く申し上げた」と強調。これに対し、増田社長は目標達成に向け「オールジャパン体制で一丸となり取り組んでいく」と表明したという。

確かに、今回の下北半島の現地取材を通じ、原子燃料サイクルが本格始動する時期が確実に近づいていることを実感できたのは大きな成果だったといえよう。

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