【現地ルポ/5月13日】JERAが富津火力公開 国内最大級LNG施設の全容

2025年5月13日

発電大手のJERAは5月8日、富津火力発電所(千葉県富津市)の設備を報道陣に公開した。同発電所は全4系列21軸からなる発電機群をはじめ、LNG船を受け入れるための専用バース(船着き場)、12基の地下式貯蔵タンク、神奈川エリアへガスを供給する東西連系ガス導管などを有し、国内最大となる516万kWの発電能力と設備規模を誇る。4号系列では、2023年8月に最新鋭のガスタービン・コンバインドサイクル発電システム(東芝・GEの共同システム)へのリプレースが完了し、発電効率60%を実現するなど高い性能を達成している。今回の公開では、首都圏の電力供給を支える巨大インフラの実態と、その支え手達の姿に触れることができた。

最新鋭のガスタービンが据え付けられた4号系列の建屋内部。静けさの中に、機械音がこだましていた

最初に視察したのは中央制御室だ。フロアの右手には、発電量やガス導管の流量が表示される「LNG制御盤」が設置されている。作業員はこれらをモニターしながら、需給や再エネの出力状況に応じて施設全域の設備の起動停止をマニュアルで行う。近年では、太陽光発電の普及などの影響から起動停止回数が増加しており、昨年度は2564回と過去最高を記録した。この影響ついて、泉義和副所長は、「特にガスタービンなどの金属製の部品は温度変化によるダメージを受けやすい。現段階ではインターバルの工夫や状況に応じて分解点検の頻度を上げていくなどの対策を取っているが、さらなる対処法を模索していく」と説明。調整力を担う火力現場では、柔軟な運用体制の構築に向け日々試行錯誤が行われている。

あらゆる発電設備とガス流量がここで管理される

階段を降りて地下13mに達すると、厚いコンクリートに覆われたトンネルが姿を現す。その内部を貫くのは、東西連係ガス導管。導管が整然と敷設されたトンネル内はどこか無機質で、荘厳ささえ漂わせていた。内径700mm、全長は約18kmに及び、1時間あたり最大300~400tの天然ガス供給能力を有する。東京湾海底に敷設されており、川崎市の東扇島発電所に通じている。導管の脇には自転車数台。敷地内で遠く離れたメンテンナンス地点までの移動手段として用いているそうだ。薄暗いトンネルの中に一歩足を踏み入れると、果てしなく続く景色に、まるで永遠に伸びているかのような錯覚を覚える。天然ガスの安定供給を担うインフラのスケールの大きさを、間近で体感することができた。

巨大トンネルに覆われた東西連係ガス導管は東扇島発電所(川崎)まで続く
導管の脇には、トンネル内の移動手段である自転車が並べられている

なお、富津火力は千葉、五井、姉崎、袖ケ浦火力、さらには近隣ガス事業者にも燃料を供給する役割を担っている。海底・地下に広がる導管を駆使し、見えないところから首都圏のエネルギーを支えている。

第二バースに停泊するLNG船。船の側面に設置された4本のアームで荷揚げ作業を行う

年間約1000万tの受入実績を誇る富津火力のLNG基地は、主に船を受け入れる2つのバース、地下式貯蔵タンクなどで構成され、調達先は20カ国にも及ぶ。この日はそれぞれのバースで1隻ずつのLNG船を迎え入れていた。山本茂保副所長によれば、「LNG船が来るのは平均で3日に1回、次に来るのは4~5日後」らしく、このような光景を見られるのは運がいいとのこと。 LNGの受入作業では、接岸した船の側面に設置された複数のアームが要となる。いずれも油圧で駆動し、船側の導管と接合するように現場作業員がリモコンで操作する。アームは、船側のタンク内における圧力上昇を防ぐためのリターンガスの供給に充てるものと、LNGを敷地に荷下ろしする際に使用するアンローディングアームとに分かれる。この日、第二バースのアームは4本だったが、本来はメンテンナンス作業に入っていたアームを加えた5本で作業を行う。1時間あたりで最大1・2万klのLNGを荷揚げすることが可能で、17万kl規模のLNG船であれば、17時間ほどで作業を完了することができる。荷揚げ作業は、澄み渡った青空の下、穏やかな海の上で粛々と進められていた。

高さ17mもの屋根が露出する地下式タンク群

敷地内に移されたLNGは地下式の貯蔵タンクに送られる。施設の屋上からは、地下35 mに埋設された直径70m、最大容量12.5万klの巨大タンクをはじめとした12基のタンクが立ち並ぶ光景を一望できた。タンクは耐熱性の高いメンブレン構造で覆われているほか、万一の火災に備えた放水装置を完備。さらに、敷地内には緊急時に大量の水を一気に放射し、タンク全体を包み込む「ウォーターカーテン」も敷設されている。この日は実際に、およそ20m弱もの水柱が勢いよくタンク周辺に立ち上がる様子が披露された。視察の模様は弊社SNSでも順次配信予定。現場のリアルな姿を、ぜひそちらでもご覧いただきたい。

発電やLNGの供給を担う一連の設備群を実際に見て回る中で、日々の電力供給がいかに緻密な技術と綿密な運用によって支えられているかを実感する一日となった。膨大なエネルギーを日々生み出し続ける富津火力の設備群。その足元で行われる一つひとつの作業が、首都圏の「当たり前の日常」を下支えしている。