【コラム/5月20日】2025年度のGX・DX政策を解説

2025年5月20日

一筋縄ではいかない 脱炭素電源の開発・確保

脱炭素電源の確保は、原子力発電と再エネの両輪が機能することが必要となる。

まず、原子力については、いわゆる「崖グラフ」にあるように、このまま指をくわえているだけでは、40年エネルギー需給見通しにあるような電源構成比率2割を維持することは難しく、そのためには数値目標も含めた具体・抜本的な打ち出しも必要だろう。再稼働済みプラントの安定運用に加え、再稼働が実現していないプラントの早期再稼働に向けた国・地域・事業者一体となった真剣な議論を通して最適な解を出すこと、そしてリプレースについては設置要件が緩和されたが、実際に事業者が踏み出せるかは現状の原子力および原子力事業者への信用が決して高いとは言えない中で、いかに理解を得られるかは論点になるだろう。

現状の発電所構内でのリプレースとなるので、安全面などの管理は従前から変わらないが、新しい技術となれば、相応の説明が必要だろう。経済産業省が5月2日に公表した「新潟県内における広報事業の効果についてのアンケート調査」の結果では、若い世代(15~34歳)において広告を見て考え方の変化や参考になったとの回答が4割強、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働については「再稼働すべき」「規制許可と避難対応があれば容認」は49.6%と、一定の評価が得られたが、一方で、再稼働を容認できない方の意見(複数回答が可能)の中には、安全性や使用済燃料の処理の問題に加え、「電力事業者を信用できないから」が約4割と高く、まだハードルは高いと感じたところである。

次に、再エネについては、比較的、短期に建設が可能な太陽光発電開発の加速、「切り札」とされる洋上風力発電の案件形成・早期稼働、世界的にポテンシャルが高い地熱発電開発の後押しなど、案件形成を続けていかなければ容量は増えていかないことから、制度的措置や初期の資金的な支援が必要だろう。

この4、5月においては、2つの官民協議会が開催された。1つは次世代型地熱発電で、もう1つが次世代型太陽電池である。2つとも、GXの分野別投資戦略における次世代再エネに含まれており、今後、GX先行投資により技術開発や実証、実装に向けた取り組みを支援し、市場創造として導入目標や支援策、海外展開といった戦略などの策定・実行がアクションプランに基づき進められる予定となっている。

次世代型を含めると100GW近いポテンシャルがある地熱発電は、脱炭素型ベース電源の1つとして活用が期待されているが、開発から操業、資源、外部要因、ファイナンスといった数多くのリスクがあり、地域との調整も非常に求められる。そのため、ポテンシャルの割には開発実績が少なく、JOGMECの支援による従来型の開発加速や次世代型技術の早期社会実装に向けた取り組みが進むが、官民協議会では「技術・研究開発支援」と「国内での実証支援」の両輪でシステムの構築を目指し、不確実性に応じて3つのフェーズ・ゲート毎にその事業性を評価しながら、実証事業を推進し、最終投資判断を図るものとする。そうした取り組みのロードマップを策定し、10月を目途に取りまとめを予定している。

エネルギー需給見通しにおいて、30年度の数値目標を作る際に、関係省に対して野心的な目標の積み上げを課したこともあり、これまでのフォローアップでは目標とのギャップが多くみられた。5月27日には「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 (第73回)」が開催予定で、その議題は「2030年エネルギーミックスの進捗状況と2040年に向けた取組について(関係省庁ヒアリング)」となっている。足元の進捗においてどの程度、リカバリーできているのか、また目標達成が難しいのか、そのためにはどういった補助や制度的措置、規制緩和が必要なのか、さらに第7次エネルギー基本計画でターゲットとしている40年度に向けてどのような施策が必要か、引き続き、審議会での議論が注視されるところである。

一方の次世代型太陽電池では、昨年、取りまとめた戦略に基づき、「量産技術の確立」「生産体制整備」「需要創出」を三位一体で進めることとなっており、5月に行われた官民協議会では、その進捗の報告と、今後、実証を進めていくにあたり重要となる「需要創出」について、導入初期段階における予見性確保の観点から重点分野の設定、既に目標を設定している東京都に倣い、他の大都市圏でも導入目標を設定すること、新たな技術であるがゆえに確立していない設置・施工のガイドラインを策定していくことが議論されている。また、従来のシリコン系と比べて変換効率が高く、国内外で開発が進められているタンデム型について社会実装を見据えた時間軸を踏まえた産業戦略・重点を置くべき市場・技術目標などを検討することが報告されている。今年度からは一部で実用化が始まる中で、今後は、この技術にどこまで期待し、どこまで制度あるいは投資における措置・支援の必要性を見極めるかが論点になるだろう。

脱炭素電源の開発・安定した運用は一足飛びで実現できるものではなく、一定程度、期間が必要となる。その間は、やはり火力発電に頼らざるを得ない場面も多くあるとみられることから、他の脱炭素施策同様に、トランジションという観点で、現実路線のプランも描いておく必要があるだろう。

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