【コラム/5月28日】洋上風力発電を考える~画餅の国策なのか
飯倉 穣/エコノミスト
1、無資源国の洋上風力期待
カーボンニュートラル(CN)実現に再エネ導入拡大で、この国は太陽光と風力期待である。風力は、陸上適地少なく、海域利用に国運を賭けている。第7次エネルギー基本計画(25年2月)は、洋上風力発電を30年度10百万kW、40年度30~45百万kWを掲げた。そして再エネ海域利用法で公募選定を21年以降3回実施し4.6百万kW(含む他案件5.1百万kW)を確保した。まさにビジョンを掲げ、洋上風力開発競争市場を創設し、意欲的に企業を誘導する手法が功を奏した感があった。
そこに物価高騰の風が吹いた。「国内洋上風力発電事業に係る事業性再評価についてのお知らせ」(三菱商事2月3日)だった。報道もあった。「洋上風力日本も試練 三菱商事損失522億円4-12月 調達建設コスト上昇 米欧で撤退相次ぐ」(日経2月7日)、「三菱商事洋上風力で減損522億円撤退可能性言及避ける」(朝日同)。
暫くすると、「洋上風力 より高値で売電 指針見直し 三菱商事落札の3海域」(日経3月14日)となった。事後的なルール変更に首を傾げる開発事業者もいた。他の分野の専門家から洋上風力導入計画の妥当性に対し疑問提起もあった(IEEI掲載提言4月21日)。洋上風力開発の意義と今後の推進策を改めて考える。
2、洋上風力の可能性
日本の風力発電は、24年12月末累積導入量2720基、584万kW(日本風力発電協会)である。国内発電電力量の約1%を占める(エネ庁集計発電量23年度9,215百万kWh)。これまで陸上風力主体に開発が進んだ。陸上風力159百万kW可能の風呂敷流試算もあるが、立地絡みで先行き限界の指摘もある。
そこで日本列島を囲む海洋に注目が集まる。洋上風力の可能性は、着床式128百万kW、浮体式424百万kW(日本風力発電協会)という見方である。同協会は、2050年風力発電140百万kW(陸上風力発電40百万kW、着床式洋上風力発電40百万kW、浮体式洋上風力発電60百万kW)を開発し、全発電電力量の1/3を風力発電で賄うことを目指している(陸上700億kWh/年、洋上2628億kWh/年、計3328億kWh/年)。
このような見方の後押しを受けてか、第7次エネ基本計画は、再エネで、洋上風力発電の位置を強化した。再エネ期待は、電力供給で、3,800~5,800億kWh(全発電量10,800~12、000億kWh)で、シェア35~50%程度を目論んだ。内訳は、太陽光23~29%、風力4~8%(440~960億kWh)である。因みに原子力は、重要性の認識違いで20%程度(2,100~2,400億kWh)と過小だった。
先行き、再エネでは、太陽光が邁進中ながら、やや開発難になりつつある。地熱発電は、開発者が寡少である。陸上風力は、生態系への影響等で建設難が見える。そこで基本計画は、白地(シロジ)の洋上風力に傾斜である。案件形成に躍起である。その裏付けとなる発電単価試算は、技術革新ケースで、低位、陸上風力12~25円/kWh程度、洋上風力18~38円/kWh程度、高位、陸上風力11~23円/kWh程度、洋上風力12~26円/kWh程度だった。
捕らぬ狸の皮算用ながら、40年のエネ需給見通し(複数シナリオ)は出来上がった。その先のCN実現の姿を考えると、経済水準維持に必要な電力量1兆kWh超確保のためには、国土条件から見て、原子力4000億kWh、太陽光3000億kWh、出来るなら風力発電2000億kWhというイメージがある。つまり風力発電は、現状の20倍の発電量願望となる。