【メディア論評/5月22日】キャリア官僚の人材確保と経産省の組織改革・新機軸
2.キャリア官僚の人事管理
今回の「最終提言」作成に際しては、経産省や国交省など、省庁での対応状況の他、転職した元官僚や、官から民、民から官へのリボルビングドアを支援する企業への意見聴取も行われた。「最終提言」は、優秀な人材が国家公務員を志し、最大のパフォーマンスを発揮するための改革が必要であり、〈まずは本府省を中心に政策の企画や立案、高度な調整などを担う国家公務員〉すなわちキャリア官僚の質と量の維持のため、志望者減、若年職員の離職増に対応すべきとした。対策の一つとして、その報酬水準は、〈外部労働市場に見劣りしない水準に引き上げるべき〉であり、キャリア官僚については少なくとも1000人以上(現在は50人以上)の企業と比較すべきとされた。
OBになった後の処遇など、全体を見通した議論も必要ではないかとも思うが、まずはキャリア官僚システムの劣化を止めるための議論をということであろう。
参考=「人事行政諮問会議 最終提言」より 3月24日
「国家公務員人事管理の課題解決に向けた対応の方向性」(抜粋)
~新時代にふさわしい人事管理へのパラダイムシフト~
限られた人的資本で最大のパフォーマンスを発揮するためには、新たな時代にふさわしい人事管理にパラダイムシフトしていく必要がある。多様な職務・職域が存在する国家公務員においては、人事管理に関する課題が職域・職域ごとに異なっている。そこで本提言では、国家公務員全体で共通する課題と、特定の職務・職域において先んじて対処していく必要がある課題とを分けた上で、施策を提言する。
~特定の職務・職域を対象に先んじて対応すべき人事管理の変革~
まずは本府省を中心に政策の企画や立案、高度な調整などを担う国家公務員を対象に講じることが適当であると考えられる。
~外部労働市場と比較して見劣りしない報酬基準~
官民給与比較手法の見直し(来年度目途)
具体的には、官民給与の比較対象となる企業規模(現在50人以上)について、少なくとも従前の100人以上に戻すべきである。特に、政策の企画立案や高度な調整などに関わる本府省職員については、業務の困難性や特殊性、採用において競合する企業規模などを分析・評価し、それらの職務と類似する職責を担う民間企業の職種・職位を特定して、より実質的な比較が可能となる手法を構築すべきで、少なくとも1000人以上の企業と比較すべきである。
◎日本経済新聞の報道
日本経済新聞は、この「最終提言」について、〈霞が関に新卒・中途で優秀な人材を集められるかどうかは国際競争力を左右する〉として大きく報じた。記事は、〈国家運営の最前線に立ち、通商や外交といった分野で各国と しのぎを削る仕事はキャリア官僚にしかできない。公務員の国際競争力を高めるには「やりがい」だけに頼らず、民間出身者も含めて幅広く優秀な人材を集められる環境の整備が欠かせない〉と、まとめている。
◎日本経済新聞3月25日付〈官僚なり手不足「危機的」〉〈人事院諮問会議 報酬上げへ「大企業と比較を」採用・待遇 柔軟に〉〈政策の立案力左右〉〈人事院の有識者会議「人事行政諮問会議」の最終提言はキャリア官僚らの報酬を大企業に準じて決めるよう求めた。民間企業が賃上げを競う一方、国家公務員の待遇改善は遅れている。霞が関に新卒・中途で優秀な人材を集められるかどうかは国際競争力を左右する。「人材確保は危機的な状況に陥っている」24日公表の最終提言は国家公務員の志望者の減少や若手の離職増加といった課題への対応を迫った。目玉となるのは国家公務員の給与を底上げするための基準変更だ。人事院は民間企業の給与と比較して毎年の勧告内容を決める。現行は「従業員50人以上」の企業と比べている。提言は25年度から「100人以上」に引き上げるよう提起した。中央省庁の職員のうち政策の企画立案や高度な調整などに関わる職員は「1000人以上」の大企業と比較すべきだとも明記した。国会での法案審議に対応する部局などを想定する。国家公務員の待遇を全体的に引き上げつつ、特に重要な仕事を担う総合職らには大企業に準じた給与を保障すべきだとの考えを反映した。……年功序列や終身雇用を前提とした働き方ではなく、転職を重ねながらキャリア形成したいとの考えが若年層を中心に強まっている。公務員も新卒採用だけでなく、民間出身者を中途採用したり、民間企業と人事交流したりして人材の多様性を高めることが不可欠になっている。そのためには「ブラック霞が関」とも呼ばれる霞が関の働き方の是正が喫緊の課題となる。提言は「やむを得ないとする風土や意識を抜本的に切り替えることが求められる」と唱えた。省庁による取り組みには限界もある。国会での質疑や法案審査への対応を担う職員の場合、議員側からの質問通告が前日深夜になる場合もあり、深夜・早朝まで対応に追われやすい構造があるためだ。提言は国会に対して速やかな質問通告やオンライン会議の活用など「一層の改善が求められる」と記載した。育児や介護などへの影響が大きい転勤のあり方の変更も促した。必要不可欠な転勤をする職員には「十分な金銭的インセンティブや組織的サポート体制を整える」よう訴えた。休業した職員の職場復帰支援も盛り込んだ。……最終提言は現状の人事制度について運用面では「年功的な色合いが濃い」と指摘した。実力本位の人事管理を進め年次に縛られない登用をしやすくする報酬や評価への移行を求めた。行動規範についても多様な人材が共通の目的意識を持って働く指針と位置づけた。国家運営の最前線に立ち、通商や外交といった分野で各国としのぎを削る仕事はキャリア官僚にしかできない。公務員の国際競争力を高めるには「やりがい」だけに頼らず、民間出身者も含めて幅広く優秀な人材を集められる環境の整備が欠かせない〉