【メディア論評/5月22日】キャリア官僚の人材確保と経産省の組織改革・新機軸

2025年5月22日

●今後の困難な課題

中央行政には時間をかけて対処すべき困難な課題や厳しい対応を迫られる政策分野も存在する。経産省でも、エネルギー政策分野では、下記のような課題について、いずれ議論の先送りがきかないタイミングが来るであろう。

・原発の稼働体制(再稼働・新増設・核燃料サイクル)や再エネ進捗の停滞などが見えてくる中での安定供給と脱炭素の両立

廃炉費用の拡大が明らかになった場合の東電経営問題

あるOBは、「東電問題は50年、100年かかる事業であり、歴史と向き合う事業。担当が変わったからじゃあよろしく、ではすまない問題」と述べている。大臣を始めとする政治と事務方の厳しい覚悟が必要となる。なお、経産省にとって大きな政策課題として当面続くであろう半導体とエネルギー政策の双方について、政治では、山際大志郎氏(総合エネルギー戦略調査会幹事長・事務局長、半導体戦略議連会長)が役割を果たすことになっている。前回衆院選で原発に知見のある複数の議員が落選したことの影響も出ていると言えよう。また経産省OBでは、嶋田隆元事務次官が次世代半導体の国産化をめざすラピダスと東電経営問題の双方について、関与する状況になっている。

◎ブルームバーグ24年11月19日付〈自民半導体議連 山際元経済再生相を会長に選出 甘利氏は名誉会長に〉〈自民党の半導体戦略推進議員連盟は19日、総会を開き、山際大志郎元経済再生相を会長に選出した。山際氏は先の衆院選で落選した甘利明元幹事長の後任。関芳弘事務局長が記者団に明らかにした。同議連を21年に立ち上げ、政府の半導体支援を主導してきた甘利氏は名誉会長となる。山際氏はともに経済安全保障議論を進めてきた中心メンバーで、政府支援が途切れることがないよう甘利氏の役割を引き継ぐ。幹事長には小林鷹之元経済安全保障担当相が就いた。……関氏は、外貨を稼げる産業を国内で育成するには「最先端の分野で勝負していくしかない」とし、半導体はその強力なツールになり得るとの認識を示した。 その上で「今後の産業においてチョークポイント(サプライチェーンの要衝)になり得るところであり、どんなことがあっても成功させ、勝ち抜いていくしかない」と語った。半導体議連は、ラピダスへの最大限の支援継続などを求める「異次元の支援によるわが国半導体産業復活に向けた決議」を取りまとめ、近く政府に提出する。(←11月20日提出) ……〉

◎朝日新聞24年11月22日付〈ラピダス特別参与に嶋田元経産次官〉〈次世代半導体の国産化をめざす「ラピダス」の特別参与に、元経済産業事務次官の嶋田 隆 氏(64)が就任したことが21日分かった。……巨額の国費を投じて官民一体で進めようとしている事業で、政府との調整役などを担うとみられる。ラピダスによると、嶋田氏の就任は10月25日付。特別参与は顧問のような位置づけで、無報酬だという。嶋田氏は同月2日には、政府が出資する原子力損害賠償・廃炉等支援機構の特別参与にも就いている。産業政策に通じている嶋田氏が、今の経産省が抱える2大プロジェクトに関わることになった。……〉

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