バス営業所内の水素ステーション 国内初整備で大型車普及に弾み

2025年6月6日

FE岩谷コスモ水素ステーション

水素自動車向けの供給インフラ整備と運用を手掛ける岩谷コスモ水素ステーション(喜村博代表)が、バス営業所内としては国内初となる水素充填所(液体水素式)を開設した。都営バスの車庫である東京都交通局の有明自動車営業所(東京・江東)内に開設し、4月から都バス向けに供給している。

一般の燃料電池自動車(FCV)と異なり大型バスなどの商用車は、決められた時間に決められた量の水素を充填するため一定の需要を見通すことができる。FCVの普及が不透明な中、こうしたバス向けの供給インフラ整備は、水素社会の実現に向けた大きな一歩となる。

加えて都は、国内バス事業者として最も多くのFCバスを運行しており、その数は80台にのぼる。さらに2027年度までに、100台に増やす方針を掲げている。公共交通機関として、都が水素利用を推進していくことに大きな意義がある。バス向けの「大口需要」の対応には、短時間に大容量の水素を充填する必要がある。そのために今回、ある工夫が施された。それは「液体水素昇圧ポンプ」(三菱重工業製)を採用したことだ。

大容量の水素を充填 液水ポンプで短時間供給

液体水素を活用する一般的なステーション運用では、まずタンクローリーによって運び込まれた液体水素をタンクに常圧貯留。気化後に水素を蓄圧器に移し、そこから必要量に応じてディスペンサーを通じて車両に供給する。今回は、貯留タンクと気化器の間に液体水素ポンプを新たに設置した。このポンプで液体水素を液体のまま82MPaまで昇圧する。その後は「一般式」と同じだが、「ポンプをはさむことで蓄圧器を最小化し、設備全体がコンパクトに設計できる。加えてランニングコストを大幅に削減するほか、ボイルオフガスの発生を従来以上に抑えることができる」(三菱重工関係者)。

これまで多様な方式のステーションを運用してきた岩谷。コスモエネルギーホールディングスとの合弁で23年に水素ステーションを運用する新会社・岩谷コスモ水素ステーションを立ち上げた後も、液体水素ポンプという新たなアイテムを活用して、最適な供給インフラの運用を模索している。

【キャプション】

国内初のバス営業所内ステーション(提供:岩谷産業)

燃料を貯める液体水素タンク