【特集2】グリーン水素の供給網を構築 通信インフラを有効に活用
【NTTアノードエナジー/パナソニック】
NTTとパナソニックがパビリオン間でグリーン水素の供給網を構築した。
さらに、既存の通信網を活用し、供給時の安全対策にもつなげていく構えだ。
NTTとパナソニックが連携し、地産地消のグリーン水素の本格利用に向け、その可能性を探っている。
NTT側で主体的に動くのはNTTアノードエナジーだ。NTTパビリオンの屋根にペロブスカイトの太陽光パネルを敷き、再生可能エネルギーでグリーン水素を製造。併設した純水素型燃料電池を通じてパビリオン内で自家消費する。加えて200mほど離れたパナソニックのパビリオンにも供給する。NTT側が埋設した水素導管を通じ、パナソニックの純水素型燃料電池の燃料にも活用する。

光ファイバーで音響を検知 漏洩箇所を瞬時に特定
NTT側が水素利用や供給に取り組む理由には二つの意義がある。「NTTグループは全国で約1%相当の電力を消費しており、カーボンニュートラルに取り組む責務がある」。NTTアノードエナジーの担当者はこう話す。1%とは約82億kW時。この脱炭素化がグループとして喫緊の課題だという認識だ。
もう一つの意義が既存インフラの有効活用だ。「地下空間には全国60万㎞の光ファイバー網を整備している。この通信インフラを活用して水素供給網を構築することで脱炭素化に貢献できないか模索中だ」(同)
今回の会場内の水素管には光ファイバーが巻き付けられている。そしてこの仕掛けこそが、今後の水素供給の可能性を広げる鍵となる。水素はクリーンなエネルギーだが、一方で漏えい対策は重要課題だ。「例えば導管から水素が漏れ出すわずかな音でも、光ファイバーによって音響を検知して瞬時に漏えい箇所の特定が可能になる」(同)
現状の水素供給では、都市ガスのガス事業法にのっとって運用しているため、一般的にはガス漏れの臭いを確認するために保安の観点から付臭されている。事業者は水素の製造場所で付臭し、付臭された水素を導管で供給。需要機器側で付臭剤を取り除き燃料電池などの設備を動かす必要がある。
一方、今回のNTT方式では、付臭剤は不要だ。その分、コストを抑えられる。実際の運用コスト面で現状方式との比較をするのは難しいが、仮に安全性の評価や保全対策の効率向上の成果が得られれば、今後の展開に弾みを付けることになろう。
同社は、さまざまなデータを収集し、2028年までに運用の実現を目指す。