【特集2】電化による空の次世代型移動手段 交通分野の課題解決に期待高まる

2025年6月3日

【トピックス/空飛ぶクルマ】

電気を動力に飛行し、騒音が少なく環境にも優しい「空飛ぶクルマ」。渋滞解消や過疎地の移動、災害時の輸送などの活用が見込まれている。

SF小説や映画の世界を彷彿とさせる次世代モビリティ「空飛ぶクルマ」。実物の機体が万博会場にお目見えした。特徴はヘリコプターや小型航空機よりも安価で騒音が少ないこと。都市部の渋滞解消をはじめ、離島や山間部の移動手段や災害時の救急搬送・物資輸送などの活躍が期待されている。
今回の万博にはANAホールディングス、日本航空・住友商事共同出資のSoracle、丸紅、SkyDriveの4社が出展。各社の機体は、来場者の関心の的になっている。展示施設「空飛ぶクルマステーション」も見どころだ。体験型シアターには最新技術による映像や立体音響・振動を採用。実際に空中を移動しているような臨場感が味わえる。

離着陸場で公開されたSkyDriveの機体

EVや蓄電池で培った知見を活用 インフラ整備で関係各社と協業

空飛ぶクルマは、電気を動力源に飛行する。モビリティの電化で期待されるのが、ゼロカーボン社会への貢献だ。そうした中、関西電力はEVや蓄電池などで培った知見を生かし、電力供給面からサポートを行っている。会場内の離着陸場「EXPO Vertiport」ではオリックスとの連携で電力インフラの整備と運営を担当。一方、SkyDriveと共同開発中の充電設備も提供している。
SkyDriveは2021年に日本で初めて、空飛ぶクルマの型式証明申請が国土交通省に受理されたリーディング企業だ。関電は22年に同社との業務提携を締結。今年3月には追加で出資し、社会実装の促進と事業領域を拡大する計画を発表した。今後、太陽光発電・蓄電池オンサイトサービスやエネルギーマネジメントシステムなどによる離着陸場向けエネルギーソリューションの共同提案を実施する。同時に、機体や充電システムを改良し、デファクトスタンダード化を進める方針だ。
国や自治体の動きも加速している。経済産業省と国土交通省、また東京都はそれぞれ官民協議会を設立し、技術開発や制度整備などを協議中。さらに、国交省は今年1月、「バーティポート(VP:空飛ぶクルマ専用の離着陸場)施設の在り方検討委員会」を立ち上げ、インフラ整備に関する議論を開始した。将来、日常生活で利用できる移動手段となるのか、今後の動向が注目される。