【SNS世論/6月24日】選挙前の自民党の「保守仕草」見透かすSNS
次世代の総理の可能性ありと注目を集めるコバホークこと小林鷹之衆議院議員・元国務大臣(経済安全保障担当)が6月20日、SNSのXで次の投稿をした。
「国内にこれ以上太陽光パネルを敷き詰める必要はありません。先日も党の会議で言いましたが、食料安全保障の観点からも農地を確保し適切に利用することが大切であり、国としては営農型太陽光を推進すべきではない(以下略)」。

ところが反響の大半は批判で、ネット炎上状態になった。「そう言ってますが。未だに脱炭素推進してますよね? 自民党は」「コバホークまで保守仕草。選挙前にみっともない」などの返事があった。
SNSでは話題の中心は政治だ。そこで「保守仕草」という言葉が最近生まれた。選挙前に保守のふりを急にするが、実際には何もやっていない、もしくは自分のこれまでの行動と矛盾する行動をする議員のことだ。特に自民党議員に批判が集まる。その人たちが批判される論点の中に、「再エネ」「原発」が含まれ、エネルギー関係者も注目せざるを得ない。
選挙公約から消えた再エネ 登場した外国人対策
今年は6月に東京都議選、7月に参議院議員選挙が行われる。小池都知事の与党である都民ファーストの「10の政策集」https://tomin1st.jp/2025/policy.html を見ると、これまで同党が主張してきた、再エネ、脱炭素がない。小池都知事主導で行われ、保守派から大変な批判を集めた太陽光パネル義務化政策のPRをしていない。現在、太陽光パネルは中国で作られるものが大半を占め、しかも原材料は中国が民族弾圧をするウイグル人の居住地で、政治犯の強制労働で掘られている可能性が高い。保守派でなくても、批判するのは当然だ。
自民党の2025年の政策集にも、再エネ振興、GX推進は書かれていない。6月23日時点では参院選の公約は出ていない。
再エネ拡大、反原発を訴えてきた河野太郎衆議院議員は最近、その問題を取り上げなくなっている。今関心を向けているのは不法行為をする一部の外国人管理の規制強化だ。ちなみに、河野氏はかつて法務副大臣を務め、外国人労働者の規制緩和政策を進めた。
6月には衆議院解散の噂があった。衆参両議員のポスターが張り出されていたが、自民党議員の中には、人気が伸び悩む石破茂自民党総裁・首相の顔ではなく、保守派の高市早苗議員の顔を自分のポスターに一緒に出す議員も多かった。
リベラルに傾きすぎた自民党、突如変身
自民党の岸田文雄政権、石破茂政権はリベラル色が強い。前の安倍晋三政権、菅義偉政権は、保守色は強かった。自民党はこのように左右に触れてバランスを保ってきた。しかし岸田・石破政権は選挙に弱い。これは安倍元首相が常に意識して政権を支えた、有権者の一定数を占める「岩盤保守」が、自民党を支持しなくなったからとの分析もある。
そこで自民党は急に選挙前に、保守層の取り込みに躍起になっているのかもしれない。保守層の政治行動は反リベラルで特徴づけられる。保守層の多くはリベラル派の好きな、共生社会、再エネ・脱炭素が嫌いだ。
ネットでは、こうした自民党の保守政策の強調に、評価の声は少ない。右も左もネット言論は強めの言葉ばかりだが、そこでは「保守仕草」という強い批判の言葉が生まれ、多くの保守派の人が使うようになっている。自民党は外国人土地取得の規制提言をしたが、「20年言ってきたのに無視して、今さら言っても実行すると信じられない」と、自民党から日本保守党に鞍替えした地方政治家が話していた。再エネ・エネルギー政策でも同じような批判が目立つ。
ネットの兆しに注目、大きな動きになるか?
このコラムの目的はSNS世論の動向、そして社会とエネルギー産業への影響の分析だ。「保守仕草」への批判は、まだ自民党への感情的批判にとどまり、具体的な形にはまだなっていないようだ。しかし選挙前に、どうも強まっていくように思える。
2011年の福島原発事故の直後に、バタバタと深い議論のないままに決まったエネルギーをめぐる諸制度の再検証の機運が高まりつつある。そしてSNSは海外の世論とも連動しやすい。米国で脱炭素政策の否定、原子力拡大がトランプ政権で進む。また今は「経済安全保障」が政治の流行り言葉だ。石破政権でも、それは継続している。
エネルギー問題はイデオロギー、つまり「人間の行動を左右する根本的な物の考え方の体系。観念形態。俗に、政治思想や社会思想」(グーグル日本語辞書の定義)と関係なく、合理性で決められるべき問題であるはずだ。しかし福島原子力事故の後で、「原発は悪」という思想に引っ張られてしまった。再エネは重要だが、その過大評価も一部にあった。事故の衝撃が大きすぎ、それは仕方のない面があるにしても、急に作られた現行の諸制度には、議論不足、そしておかしなものがある。
SNSで6月時点に観察される政治情勢は、どの党への支持も盛り上がっていないということ。自民党批判は根強く、左右両方の少数政党が躍進しそうな雰囲気だ。自民党批判が、エネルギー政策の見直しに批判と結びつくか。現時点では政策を変えるほど広い動きには見えないが、SNSの「保守仕草」批判の多さを見ると、注意を払った方が良さそうな動きだ。自民党の敗北、そして選挙後の政策の変更につながるかもしれない。