【特集2】過疎地の配電網維持に課題 マイクログリッドの好例必要
分散型リソースの活用が各地で進んでいる。再エネ主力化に果たす役割などについて聞いた。
インタビュー/飯岡大輔(中部大学工学部電気電子システム工学科教授)
―分散型リソースに調整力を担わせる取り組みが進んでいます。
飯岡 調整力を担う火力の完璧な代替は難しいと思います。ですが、VPP(仮想発電所)のように需要を統合したり、蓄電池を駆使したりすることで、その役割に近づけることはできると思います。
―太陽光発電でもその一部を担えますか。
飯岡 スマートインバータの機能を使えば、可能性はあります。その一つが周波数の上下変動に合わせて、太陽光発電の出力を下げたり上げたりする「Frequency-Watt機能」です。また、電圧変動を適正範囲に維持するために無効電力を出し入れする「Volt-Var機能」もあります。
―無効電力について解説をお願いします。
飯岡 直流には有効電力しかありませんが、交流には無効電力もあります。有効電力とはモーターを回したり、光に変えたりと、他の用途に変換可能なものです。支払う電気料金は有効電力の使用量で決まります。
一方、無効電力は電圧と電流の位相がずれると生じます。実際、電力系統のさまざまな場所で生じています。そのため電力系統ではコンデンサやコイルを設置して無効電力を調整し、電圧を適正範囲に制御しています。
―マイクログリッド(MG)の取り組みが進んでいますが、コスト面で課題があります。
飯岡 経済性を前提に話すと、MGは規模が小さいので投資に見合うメリットが得にくい。同様に今後、一般送配電事業者が過疎地の配電網を維持管理していく上でも同じ課題を抱えることになります。
配電ライセンスという新しい制度ができたので、今後はその好例を生むことが大切です。ライセンスの事例ではありませんが、例えば昨年4月、宮古島市の来間島で停電が発生しましたが、早期に復旧できました。こうした事例を世間に広める必要があります。
―システム改革への意見はありますか。
飯岡 制度の複雑さが指摘されていますが、多くの議論を重ねた上での現状の仕組みなので否定はしません。ただ、今後、電力の安定供給を支えるシステムが複雑化すると思います。将来的にその複雑さを理解する人材が存在し続けるための仕組みが必要になるでしょう。今の日本の電力系統は非常に良く整備されています。電力会社の設計思想とそれに対応してきたメーカーの技術力は素晴らしいものです。私も電力を安定的に供給することの難しさを皆さんに伝えていきたいと思っています。
