【特集2】初期投資ゼロで大型設備群を構成 高度医療機関への安定供給支える

2025年7月3日

【東京ガスエンジニアリングソリューションズ 沖縄ガス】

在日米軍から返還された沖縄県宜野湾市のキャンプ瑞慶覧地区。このエリアの一部である西普天間住宅地区内では再開発が進行中だ。その第一弾が、沖縄健康医療拠点ゾーンへの琉球大学医学部と大学病院の移転。この西普天間キャンパスでは、新たなエネルギー供給スキームが構築されている。

公募入札の結果、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)や地元の沖縄ガスなどの事業者によって、大型の分散型コージェネを核とした大規模なエネルギーサービスプロバイダー(ESP)事業が展開されているのだ。

620の病床数を持つ大学病院

国立大学法人初のESP 一部設備にデュアル燃料式

本件はTGESがシステム設計、施工、エネルギー調達、メンテナンス、監視、オペレーションまでを一括で担う。システムとしてガスエンジンコージェネ(1200kW×2)、吸収式冷温水機(560RT×2)、蒸気ボイラー(1t/時×2)、ターボ冷凍機(500RT×1)などを採用。加えて非常用発電機(2500kVA×2)、特別高圧・高圧受変電設備といった大規模なエネルギー設備群で構成している。

「ESP事業の公募に対して、最適な提案であったためにこのシステムを採用するに至った。国立大学法人としてESP方式を採用するのは全国で初めての事例。イニシャルレスで設備導入し、設備の維持管理を民間に担ってもらうこの方式は、他の大学も興味を示していて見学にも来ている。他機関に対しても本事業における事例や効果など伝えていければと思っている」。琉球大学施設運営部施設整備課の中塚和成課長は話す。

一方、エネルギーサービスを担うTGESにとって、県内の医療機関への提供は、これが初めての事例だ。「島しょ部における大型コージェネの導入は、ピークカットなどに貢献できると考えている。その際、一連の設備群に対して、海岸にも近いことから塩害をはじめ、台風や停電対策に熟慮を重ねた。気候も内地とは違うため、供給安定性、高効率な運用を実現するために検討すべきポイントがたくさんあった」。TGESソリューション推進本部沖縄営業所の大城優也課長は経緯を説明する。

また、病院向けという点において供給安定性にも配慮している。ボイラーや吸収式設備は石油とガスのデュアル燃料に対応するなど、BCPの機能を高めていることも特徴だ。琉球大学施設保全課電気保全係の金城敦係長は「県から基幹災害拠点病院や高度救命救急センターの指定を受けられるハード面のスペックを持っている」と、盤石なエネルギーシステムに期待する。

琉球大学の金城氏(左)と中塚氏

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