【特集2】構築進むマイクログリッド CO2削減と災害対策強化に寄与

2025年7月3日

では実際、停電を解消した際の運用はどうだったのか。「宮古島のディーゼル発電側に起因することが分かり、復旧までに時間がかかりそうだった。沖電の一般送配電部門や宮古島市と協議した結果、来間島ではMGを立ち上げた方が早期に復旧可能と判断した。実運用での蓄電池のブラックアウトスタートは初めてだったがトライした」(塩浜マネージャー)という。

来間島では蓄電池を運用し早期復旧した

そこでまず、沖電が来間島に設置している中規模蓄電池の運用に遠隔で着手した。続いて、適正な電圧と周波数を確立するために、わずか2秒で6600Vの電圧を確保し本格的に送電を開始。300秒後には、適正な電圧値を検知した太陽光発電が次々と再連系し、瞬く間に島内の需給バランスを保っていった。蓄電量や当日の天候具合によっても運用は変わるが、今回問題なく運用できたことは大きな成果であった。

沖電によると、それでも課題は残っているそうだ。発電設備が系統へ送電開始する際、大きな電流が発生するが、蓄電池はどこまで耐えられるのか。その際の系統全体への影響はどうなるのか。系統側で対策すべきことは何か。これらは未知の技術領域だという。とはいえ、特殊な需要ではなく一般家庭のような需要群であれば、来間島式MGの構築は可能だそうだ。再エネ100%で賄うことは難しいと前置きしながらも、塩浜マネージャーは「今後、波照間島でさらに規模の大きなシステムを構築する予定。どこまで再エネを増やせるか、経済的な視点も加味して見極めたい」と話す。

既存メガソーラーを活用 クラウド上のEMSで制御

来間島とは異なるアプローチで再エネを主体としたMGを構築しているのが長野県飯田市だ。環境省の「脱炭素先行地域」に選定されているエリアでもある。ここでは中部電力が旧RPS制度(再エネ利用義務制度)時代の11年に運開したメガソーラー(1000kW)を中心に既存の配電網を活用。そこにリチウムイオン型の系統用蓄電池を新設した。加えて、発電などに関するデータの取得や予測、エネルギーリソースをクラウド上で制御するEMSを新たに構築している。

飯田市では中部電力のメガソーラーを活用

対象エリアの需要規模は高圧(2件)と低圧(約70件)の約300kWで、今年3月から30年度まで運用する予定だ。太陽光発電や蓄電池の活用によってCO2フリー電気の自家消費を促し、最終的には平常時の電力使用に伴う民生部門のCO2排出量の実質ゼロを目指す。

もう一つの取り組みが有事の対応だ。飯田市でも来間島と同様、有事には電力系統を切り離して運用する。メガソーラーの上位系統を切り離し、太陽光発電や新設した蓄電池の自立運転でシステムを運用する。地元の保育園や小学校、公民館など計6施設に供給するスキームだ。飯田市は「脱炭素化と同時に災害レジリエンス機能の強化を図る。本モデルでは新たなインフラ投資を最小限に抑えられた。類似地域へ水平展開できるような取り組みにしていきたい」としている。

各地で構築されているMG。これらの取り組みは、再エネ主力化を掲げるわが国に新しい教訓を与えてくれる。

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