e—メタン試験施設をスケールアップ カーボンニュートラル化へ前進

2025年7月6日

【大阪ガス】

大阪ガスはe―メタンの導入拡大に向け、SOECメタネーションの試験施設を竣工した。

軸となる電解装置やメタン合成プロセスでの課題を抽出し、30年度までの技術確立を目指す。

今使っている都市ガスがいつの間にかカーボンニュートラル化されていく―。そんな未来を実現する鍵となるのが、「e―メタン」の社会実装だ。大阪ガスではその実現に向けて、既存技術であり大規模化に取り組むサバティエ方式、下水汚泥や廃棄物などを活用するバイオ方式メタネーションの開発・実証を進めてきた。そして同社が並行して力を入れているのが、世界最高水準のエネルギー変換効率を実現するポテンシャルを秘めた「SOECメタネーション」の技術開発だ。

SOECの要となる電解装置

SOECメタネーションは、水やCO2を700~800℃の高温下で電気分解し、得られた水素やCO(一酸化炭素)からCH4(メタン)を製造する。サバティエなどの従来方式が水素生成とメタン合成を別々のプロセスとして行い、各プロセスでエネルギーロスが生じるのに対し、SOEC方式ではメタン合成で発生する排熱を前段の電解プロセスに再利用でき、システム全体のエネルギー効率を大幅に高められるのが特長だ。投入した再生可能エネルギーをどれだけメタンに変換できるかを示す変換効率は、従来方式が60%程度に留まるのに対し、SOEC方式では85~90%を実現できる可能性がある。


試験スケールは100倍に 電解・熱除去能力の向上へ

同社がSOECメタネーションの技術開発に本格的に乗り出したのは2022年。産業技術総合研究所とともに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択されたことを受けたものだ。

ラボスケール、ベンチスケール、パイロットスケールの3段階で開発を進める計画で、30年度までの技術確立を目指している。昨年から実証していたラボスケールでの試験を終え、現在は製造規模が100倍となるベンチスケール段階に移行中。このほどベンチスケール試験施設が完成し、6月3日に竣工式が行われた。

竣工式の様子

ベンチスケールでの試験は27年度までを予定。この段階では水素生成とメタン合成の両工程において、高温下での制御やスケールアップに伴う課題の抽出が求められる。大阪ガス先端技術研究所SOECメタネーション開発室統括室長の大西久男氏は、具体的な技術課題として「高温電解装置の大型化」「メタン合成装置における熱除去能力の向上」の2点を挙げる。

今回のスケールアップにより、これまでは一般家庭2戸分であったe―メタン製造量は、200戸相当へと拡大する。このe―メタンのもととなる水素を生成する高温電解においては、固体酸化物を用いた電気分解素子(セル)を積層した「セルスタック」を複数設置し、電気分解を均一に行う必要がある。そのためには、原料の水蒸気などを安定的かつ均一に供給するシステムの構築が不可欠となる。

一方、メタン合成反応においては、発生する排熱を効率的に除去し、装置内の温度上昇を抑えながら、この熱を電解に有効利用する仕組みの開発が重要な検討項目となる。大西氏は、「製造規模が拡大しても、ラボ段階で得られた効果がそのまま再現できるか、しっかり検証していく必要がある」と強調する。

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