【特集3】国が前面に立ちプロセス加速へ 官民一体で新たな体制を確立
インタビュー/久米 孝(資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)
バックエンドのプロセス加速に向け政府は前面に立つ意向だ。具体的にどう実行するか、エネ庁電力・ガス事業部長に聞いた。
―第7次エネルギー基本計画には「再処理工場・MOX燃料工場の竣工に向け官民一体で責任を持つ」「国も使用済み燃料対策について事業者とともに前面に立つ」といった記述があります。どう実施していきますか。
久米 エネ基でも、核燃料サイクルの中核となる六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場の竣工は必ず成し遂げるべき重要課題だと明記しました。日本原燃を中心に取り組む中、たびたび竣工が遅れ、関係者の心配を招いているという現状を真摯に受け止めており、官民一体で課題解決を目指します。例えば、昨夏、再処理工場完成の27回目の延期発表を機に、経産省も新規制基準の審査状況に目配りするよう、進め方を見直しました。以前はプロセスの公表がないまま、遅延の決定のみが発表されてきましたが、審査が着実に進んでいるという材料を関係者や国民にきちんと示す必要があります。こうした問題意識の下、現在は原子力規制庁と日本原燃との間で、今後の論点や進め方に関する共通認識を全体計画として共有。この全体計画に基づく進捗状況は、日本原燃から経産省にも報告されており、プロセスでずれが生じた段階から理由を含めオープンにし、われわれもフォローしやすい形になりました。以前より日本原燃の対応が評価されていると受け止めています。
また、4月に開いた使用済燃料対策推進協議会では、事業者に取り組んでほしい事項を要請。さらにエネ庁原子力立地・核燃料サイクル産業課長と、日本原燃、電力各社の担当副社長が参加する幹事会など、さまざまなレベルで情報を共有し、電気事業連合会や各社が必要な支援を行うこととしています。
このように、バックエンドの各分野で国が前面に立つ考えです。サイクル全体が輪となるように、一歩ずつ対応を進めていきます。
―法改正が必要となる可能性は?
久米 エネ基の内容を受け、原子力政策の課題を整理、具体化する議論を早急に進めることが求められており、その中で必要なアクションを検討していきます。
―米大統領が5月23日に署名した大統領令では、国内燃料サイクルの強化に向けた言及がありました。
久米 米国は元々サイクルを行っておらず、これをもって日本の政策に直ちに影響を与えることは考えにくいでしょう。一方、安全で確実かつ持続可能な長期的燃料サイクルといった記述があり、これは燃料の安定調達に向け同盟国と連携するという前政権の方針とも通じます。今後の動向を注視しています。
