【特集3】再処理施設建設が佳境に 26年度中の竣工目指す

2025年7月4日

日本原燃

RFSの後、日本原燃の使用済み燃料再処理施設を取材した。中核となる再処理工場は26年度中、翌27年度中にはMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料工場が竣工する予定だ。

日本は原子燃料サイクル政策を国として選択し、使用済み燃料を再処理して利用する計画を立てている。そして使用済み燃料の中に含まれるウランやプルトニウムといった放射性物質を厳格に管理することを国際公約にしている。再処理工場は、使用済み燃料からプルトニウムを抽出し、プルサーマル発電向けのMOX燃料に加工するという重要な役割を担う。これによって、プルトニウムは消費される。日本原燃はその政策を形にする重要な事業者だ。

再処理工場は、1993年に着工したが、現在まで竣工が27回延期された。直近の延期の理由は、2011年の福島第一原発事故の後で規制体系が一新されたためだ。それに基づく再処理施設でのルールづくりや工事に時間がかかった。日本原燃は昨年8月、目標の見直しを発表した。

同社は、目標通りの竣工を目指し努力を続けている。大手電力各社に応援を頼んで規制対応の助力を受けている。各設備の主要担当者を体育館に集め、一緒に執務させて部門間の連絡を密にするなどの取り組みを行っている。「現時点で審査は順調に進んでおり、達成できる見通しだ」(日本原燃広報)

六ヶ所原燃PRセンターから望む再処理工場
日本原燃本社の外観

ウラン、プルトニウムなどを分離する機械の模型

原子燃料の原寸大の模型

「化学工場」の集合施設 安全対策は一層強化へ

今回の取材で印象に残ったのは、再処理工場は「化学工場」の集合体ということだ。核分裂反応を引き起こして発電する原子力発電所とは全く構造が違う。再処理工場は国内では現在運営されておらず、世界でも現時点では商業炉向けには、フランスのラ・アーグ工場でしか運営されていない。規制のルール、安全対策、設備を建設することは、前例がなく、大変な作業だと理解できた。

また再処理工場では、安全性を一層強化するための工事が行われていた。竜巻対策として、冷却塔などの重要施設を頑丈な鋼鉄製の防護ネットや防護板で覆った。外部火災対策としては、地上にある薬品貯槽を地下に移設した。このほか二次災害に備え、自家発電設備、消防車、重機などを配備している。

災害対策の訓練も進んでいる。一例として火災対策がある。同社は行政の消防・防災に加え、自社で消防班を作り、迅速な消火活動を行えるようにした。取材当日、消防班による放水訓練が行われていた。重装備をつけた男性社員たちが、短時間で消防車を配置し、給水・放水を実施。安全性が設備だけではなく、社員の努力によっても高められているのだ。

原子力なければ青森衰退 福島事故後の停滞脱却

下北半島を中心に、青森県には原子力施設が集中しているが、県民の大半は、原子力を受け入れているとみられる。「原子力がなければ、下北半島の衰退は大変なことになっていた」。取材中、むつ市民からこんな意見を聞いた。日本原燃の事業開始以降、地元企業に発注された額は1兆円を上回る。こうした県民の支援を背景に、原子燃料サイクルの本格始動への準備が着々と行われている。

今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画を見ると、六ヶ所再処理工場の竣工については「必ずなし遂げるべき重要課題」と明記されている。福島事故後の停滞の流れが変わり、日本のために原子燃料サイクルの推進が再び脚光を浴びようとしている。

専用容器で搬入される使用済み燃料(提供:日本原燃)
社内消防班の消防車を使った訓練
各ふたの下に保管される高レベル放射性廃棄物