【特集2】太陽光発電の自己託送を展開 再エネ電源の開発拡大に注力

2025年7月3日

【広島ガス】

広島ガスは昨年4月、東尾道太陽光発電所の運転を開始した。発電した電気は、自己託送により本社ビルなど8施設に供給する。自己託送とは、遠隔地にある自社発電所で発電された電気を一般送配電事業者の送配電網を利用し、別の場所にある自社ビルなどに送電する仕組みで、同社として初めての取り組みだ。


同社は再生可能エネルギー電源の開発を進める中で、2021年に広島県尾道市にある自社の遊休地の有効活用を決定。当時は電力小売り事業を手掛けておらず、電源確保の優先度がそれほど高くなかったため、当初はFIT(固定価格買い取り)制度を活用した売電を検討していたという。

東尾道太陽光発電所(広島県尾道市)


経営企画部イノベーション推進室の城本菜穂氏(現・電力事業部電力企画部運営グループ)は、「売電価格が低下し続けていたのに加え、PPA(電力購入契約)も検討したが、収益性を考えれば長期契約が必要なため契約締結に関するリスクがあった。こうした事情を全て踏まえ事業性を評価した結果、自己託送に決まった」と背景を語る。


同発電所の発電規模は850kWで、自己託送先の本社ビルなどの使用電力約40%を賄うことが可能になった。また、再エネ由来の電力を使用することで、年間約536tのCO2削減効果を創出している。

ガスと電力の両輪で成長 30年度目標に向けて着実に

同社は、今年4月に公表した中期経営計画において、総合エネルギーサービス事業者として、従来の事業ポートフォリオからの変革を志向している。今後は、電力小売り事業と再エネをはじめとする新たな事業育成に取り組むことで、ガスと電力の両輪で成長していく考えだ。経営企画部イノベーション推進室の小林清秀室長は「再エネ電源取扱量は、現状で30年度目標の7割以上を達成している。大野浦バイオマス発電所の建設や北海道での小型風力発電事業への参入など、今後も目標達成に向け着実に積み上げていく」と語る。重点施策に掲げる電力小売り事業の拡大と合わせ、再エネ電源の開発に取り組む構えだ。