【コラム/7月24日】“壊国”日本、今どきの政策を考える~参院選物価対策を振り返る

2025年7月24日

3、現在の物価は何故上昇しているのか 

これらの物価関係の数値を見れば、消費者物価と賃上げの動きが気に懸かる。

原油等エネ価格(22年一時110ドル超/bbl)は、24年以降80ドル台から70ドル前後に下落した。これを受け企業物価は、輸入物価安定で2%台に低下したが、24年末から本年に入り3%台と高めで推移している。抑も企業物価は、輸入物価、コストプッシュ、プルデマンドの要因で変動する。時として便乗値上げもある。22・23年の上昇は、明らかに輸入物価の影響だった。この要因が収まったと考えれば、現在の企業物価上昇は、賃上げと値上げの影響と推察される。

経済論的には輸入物価が押し上げた物価対策は、金融引締め・歳出抑制で、縮小均衡調整が常道である。これに対し、この国では、物価上昇を上回る賃上げという主張が罷り通った。成長なき賃上げは、コストプッシュ型インフレを連動する。

消費者物価も、エネ価格等の転嫁で上昇後24年やや低下したが、25年に入り総合指数(食品エネ除く総合も)が、前年比3%台を継続している。コメ、エネ価格等の品目の影響という指摘もある。他方消費者物価の動きは、成長との絡みで見れば、違和感がある。実質成長率が、1%程度であれば、サービス産業等の価格はより小幅の動きが通常である。

そこで賃上げが気になる。賃上げは、生産性基準の賃金が基本である。それは実質経済成長率程度である。もしそれを超える賃上げなら、コストプッシュインフレを連想する。

これらを考えれば、輸入物価上昇に勢いを得た物価上昇見合いの賃上げが、企業物価を引上げ、消費者物価上昇を持ち込んでいるようである。成長なき物価上昇は、通常実物経済を縮小する。どんな対策が必要か。


4、物価対策あれこれ

物価対策で各党のアイデアは様々でなかった。バラマキと受取られる言葉が踊った。持続的賃上げ、給付金支給、つなぎ資金配賦、消費税廃止、食料品消費税減免、ガソリン価格引き下げ、適正なコメ価格、社会保険料引下げと続く。つまり賃上げ、支払い減、手取り増等の言葉だった。そして経済拡大・強化・成長願望もあった。識者は、これらの言葉を有権者目当てのアピールと侮っていないか。この国は、冷静・国士的な官僚不在で、怪しげな“政治主導”が跋扈している。国民各自が、沈着・冷静・経済論的思考を求められる世になった。

物価対策は、輸入物価上昇に伴う物価上昇なら、前述のマクロ経済政策で、金融引締め、財政支出抑制による縮小均衡調整策が一般的である。コストプッシュなら、賃上げ抑制となろう。プルデマンドなら需要抑制である。便乗値上げなら、価格監視を行うことも必要である。それにもかかわらず消費税減税や給付金の話が物価対策で登場することに困惑する。

金融政策の発動について、違和感のある日銀当事者の発言もあった。「金融政策での対応には限界 日銀・小枝審議委員 食料品の物価上昇で 利上げで抑え込み慎重な考え」(朝日同7月9日)。何か奇妙である。金融政策は、まず輸入物価に伴う物価上昇の際、22年以降引締めに転ずるべきだった。それが過去の財政政策や金融政策が引き起こした負の遺産(財政収支巨額赤字、国債残高巨額)の恐怖(国民負担の正常化=金利上昇・財政破綻)で出来なかったことは問題である。また物価上昇に伴う税収増を国債償還にあてず無駄な歳出を増加させていることも問題である。

壊れそうな日本国に必要な経済政策とは何だろうか。この点で、経済専門家の理性が問われる。

1 2 3