【コラム/7月24日】“壊国”日本、今どきの政策を考える~参院選物価対策を振り返る

2025年7月24日

5、必要な経済対策とはいうが

選挙前に日経新聞は、「今必要な経済対策」の特集を組み、識者が議論すべき経済問題を紹介した。「生産力増・社会保険料軽減」(7月1日)は、物価対策として消費税減税の効果に懐疑的で、財政状況も考慮し、経済対策でセーフテイネットの構築、サプライサイド重視の財政政策(社会資本、生産拡大投資、研究開発)、雇用流動化(規制制度改革)、勤労者生活援助なら社会保険料軽減を挙げた。

「食品の消費減税は非効率」(7月2日)は、景気の懸念材料は3点(経済拡大テンポ緩慢、物価上昇、トランプ大統領の関税政策懸念)とした。すでにデフレ脱却なので国債金利上昇等財政に注意すべきで、経済は需給ギャップ均衡で推移している。故に各党の現金給付、食品の消費税減税の提案あるが、大規模な歳出拡大を伴う景気対策不要である。第1点(低成長)は構造的・長期的な課題で供給力(生産性)を高める、第2点の物価上昇は、米の値上がり大なので、輸入米活用や買い占め売惜しみ防止法の適用を検討。第3点はトランプ関税の影響の度合い分からずである。故に現金給付や消費税減税は問題で財政面から大規模財政支出、減税不要とした。

「構造改革で成長力を高めよ」(7月3日)は、日本経済は、国内構造問題があり、その回避で海外展開拡大し、輸出比率急上昇でグローバルショックに脆弱になっている。故に国内外両面から経済構造を抜本的に改革し、新時代対応の経済システム構築を必要とする。例えばサプライチェーン見直し、地政学リスクとのバランス。国内市場重視に向けた雇用流動化、リカレント教育促進等労働市場改革、企業の新陳代謝促進、金融市場改革、農業・医療・介護分野等規制緩和である。何より潜在成長力を高める構造改革期待と述べた。

これらの論は、物価対策としての減税や給付に疑問を投げかけている。その意味で、適切な認識である。ただ提案の経済対策(構造対策、財政政策等)が、本当に日本経済の将来に有効か否か。経済均衡(とりわけ財政均衡)や物価対応金融政策に力点を置いた論は少なかった。提案の施策は、過去の失敗を勘案すると、それぞれ異論反論もある。ただ経済専門家の話で、個々に難しい論のせいか、訴える術もなく、議論もなく選挙期間中に展開を見ることはなかった。


6、今考えるべきことは

経済運営のあり方である。内外の経済環境で、輸出環境がトランプ関税に伴い厳しい状況になっている。当面の間、高関税の克服に向けた企業の合理化期待となる。また様々な貿易収支改善の努力も必要である。過去は、エネで原子力発電開発が効果的だった。その賛否論を冷徹に見据え、生きる道の模索も政治論議として必要である。財政状況を考えた財政の正常化も必要である。インフレ税収増があれば、少しでも国債発行額の減少や国債残高の償還に充てるべきである。物価安定を第一とする金融政策の正常化も喫緊の課題である。日銀バランスシートの縮小を図ることである。いずれも極めて簡潔明快なことで、国民の我慢と負担が鍵となる。

経済成長期待は、エネ面を主体とする技術進歩頼りである。そして何よりこの酷暑である。この猛暑に脱CO2エネルギー緊急対応の話題が少ないとは如何だろうか。EI統計(Energy Institute 2025 Statical Review of World Energy25年6月)を眺めて頭を抱えた人も多いであろう。この四半世紀で世界のエネ消費は、1.5倍となり、世界のエネ消費の87%が依然として化石エネである(2000年も87%)。非CO2エネは、原子力5%、水力を含む再エネ8%に留まっていた。世界中再エネ邁進の報道に惑わされていた。CO2排出量1.5倍で、地球温暖化加速状態なら、暑い理由が頷ける。物価を冷静に考えることに加え、原子力等非化石エネ供給を熱く訴え推進する問いかけが耳に響いて欲しかった。


【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

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