【コラム/7月22日】2025年度第1四半期の制度設計の振り返りと今後の展望

2025年7月22日

大きな政策の具体的な落とし込みが始まった

今年2月に閣議決定されたGX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画を踏まえ、政府内ではその後の国内外の情勢を見ながら、具体的な政策の落とし込みを関連する審議会へタスクアウトし、議論が始まっている。

例えば、原子力政策では既設炉の設備利用率向上や次世代革新炉を含めた一定の定量的な見通し・将来像の、再エネ政策では2030年エネルギーミックス目標の進捗確認と2040年主力電源化に向けた具体的な方向性の議論として再エネ価値のあり方やさらなる出力制御抑制やDR促進等の、資源燃料ではLNGの安定調達に向けたサプライチェーンリスクへの対応策の、送配電では地域間連系線の増強に係る費用負担や地内系統の増強の在り方等の検討が始まっている。

さらに、産業・エネルギー一体政策においては、GX2040ビジョンで明記された施策の一つであるGX産業立地の具体的な要件の検討が始まり、GX戦略地域としてコンビナート再生型、データセンター集積型の2つの類型と自治体が主導して進めるGX産業団地の全体像を整理し、各政策手段の概要と選定要件(案)が提示されたほか、データセンターについては、短期から中長期における対策として「ワット・ビット連携」の方向性がまとめられた。

今年で開始から11年目を迎える第5次電力システム改革については、昨年度に関係各所にヒアリングと議論を積み重ねた検証の取りまとめを踏まえ、新たに専門のWGを立ち上げ、8つの論点の議論が始まった。とりわけ着目されているのが小売電気事業者に対する量的な供給力であるkW時の確保および、そのための中長期の取引市場創設の議論で、小売電気事業者界隈からは困惑をもって議論の行方を見ているといった意見や事業者間での意見交換、資源エネルギー庁担当部署との会話が頻繁に行われているとの声を聞いている。

なお、毎年恒例であるが、政府の経済財政政策等を取りまとめた「経済財政運営と改革の基本方針」をはじめとした計画等が6月に閣議決定されたが、エネルギーに関する部分は基本的に「GX」の文脈に集約されており、斬新さや目新しさは見当たらない。


足下の制度設計も着々の議論・審議を進める日々

これも毎年の状況と変わりはないが、大きな政策の方向性の議論と並行して、既に運用が始まっている制度についても運用状況のフォローアップや見直しが行われている。

供給力関連では、長期脱炭素電源オークションの第3回入札に向けた要件設計が整理され、上限価格の引き上げや蓄電池の大幅な条件見直し等が反映された。また、第1回入札で応札ゼロに終わった予備電源も第2回入札に向けたスタンバイが完了している。

送配電関連では、北海道本州間の海底直流送電の有資格事業者による実施案検討の進捗報告や、再エネ出力制御の長期見通し更新、系統混雑の中長期見通し策定の着手、データセンター等の局地的大規模需要の接続ルールの検討、系統用蓄電池の早期接続のための順潮流側ノンファーム型接続の検討、需給調整市場の定点観測と調達率改善のための継続検討等が行われている。

電力小売関連では、内外無差別な卸売の評価(フォローアップ)、2026年度以降のインバランス料金の見直し、グロス・ビディングの取りやめ、間接送電権の商品見直し等の売上原価に影響する審議が行われたほか、今年度からリスク管理体制や資金概況といった経営の安定度を管理するための報告が始まっている。

需要家関連では、「第一の燃料」と呼ばれる省エネ政策において、AIをはじめとしたデジタルを活用した高度化、新設データセンター向けのベンチマーク設定や報告等の規律強化、中小企業の省エネを進めるための省エネ・地域パートナーシップの促進、非化石転換を促進するための屋根置き太陽光の導入余地の報告義務化、給湯機の省エネ・非化石転換に向けた基準見直し等の検討が矢継ぎ早に行われている。その他、企業等のサプライチェーン全体を巻き込んだ取組強化として、GXリーグの見直し、グリーン製品の需要拡大に向けた論点整理、建築物のライフサイクルカーボンの制度化等の議論が進められている。

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