【特集2】燃料転換と高効率利用を推進 天然ガスで効果的な温暖化対策

2025年8月3日

【日本ガス協会】

日本ガス協会はCO2排出量削減の新たな目標を発表した。「業界全体で一体感を持ちながら取り組むことが鍵」とみる。

日本ガス協会は今年6月、新たな未来像「ガスビジョン2050」とその実現のための具体的な取り組みを示した「アクションプラン2030」を発表した。その中で、CO2排出量を13年度比で1800万t削減するという新たな目標を掲げている。


前回、ビジョンとアクションプランを策定してから約4年が経過。その間、戦争勃発による地政学リスクの顕在化、データセンター建設などによる将来的な電力需要の増加、自然災害の激甚化など、業界を取り巻く環境は大きく変化した。また第7次エネルギー基本計画において、天然ガスは「トランジション期だけでなくカーボンニュートラル(CN)実現後も重要なエネルギー源」として位置付けられた。CN化とそれに向けたトランジションの手段としての重要性が公に認められた格好だ

「アクションプラン2030」より


こうした変化を踏まえ新たに策定された目標には、CO2の持つ性質も反映されている。排出されると長期間大気中に留まり地球温暖化を進展させてしまうという特性から、地球温暖化の抑制には、排出量を「断面」ではなく過去からの累積量という「面積」で捉えることが重要だ。天然ガスは化石燃料の中でCO2排出量が最も少ない。石油や石炭から天然ガスに転換することで、CO2累積排出量を足元から抑制できるため、温暖化対策として極めて効果的な方法である。

燃料転換をさらに推進 業界一丸で取り組む

同協会は目標達成に向け、燃料転換と高効率ガスシステムの導入拡大に注力していく方針だ。工業・業務用では重油や石炭から天然ガスへの燃料転換などをさらに進め、家庭用ではエネファームやエコジョーズの高効率給湯器の導入などで省エネにも取り組む。さらに、コージェネレーションやガス空調、燃料電池などのガスシステムの活用と再生可能エネルギーを組み合わせたZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及拡大にも注力する。


これまでも進めてきた燃料転換をさらに一歩前進させるため、「キーワードは一体感」と語るのは、同協会普及部の藤田尚樹エネルギーシステム企画担当部長だ。全国に約190ある地域特性や企業規模もさまざまな都市ガス事業者が志を一つにして取り組むことで、全体としての底上げを図りたいという。


これまでの燃料転換は、規模が大きな都市ガス事業者だからこそ達成できた事例が多い。技術力や人的リソースなどは事業者ごとの差が非常に大きい業界だ。「事業規模や供給エリアなどにかかわらず、業界全体で同じ目標に向かい、各事業者ができる取り組みを増やし、それぞれの役割を果たせるようにサポートすることが日本ガス協会の重要な役目」と力を込める。


今後の大規模工場の燃料転換案件はガスインフラがないなど、さまざまな課題があり容易ではないが、大手が軸となり推進していく。その一方で、地方の中小ガス事業者は、地域のニーズに合わせたソリューション提供を行う地域密着を強みとする。省エネ診断や提案、エネファームなどの高効率給湯器普及拡大、再エネや証書を組み合わせたCN化の支援、環境価値の創出など、挑戦できるものは多い。


そこで今回のアクションプランでは、地方ガス事業者でも提案が可能な多様な手段を盛り込んだ。省スペース・省コストの特徴がある高効率給湯器を既存の集合住宅で従来型給湯器から置き換える事例や、少人数・都市型住宅へ新規導入する事例などを挙げている。その結果、アクションプランは大手ガス事業者によるスケールの大きな取り組みから、家庭を対象とした事例まで網羅するものとなった。

事業者の使命実現に貢献 ガスのCN化へまい進

同協会では今後、個々の事業者の事業ポートフォリオや事業環境を十分理解し、それぞれの事業者に適した支援を提供していく。


藤田部長は「都市ガス事業者の使命はお客さまに最適なソリューションを提供し、豊かな暮らしの実現、社会・産業・地域の発展、カーボンニュートラル化に貢献していくこと。業界全体としてそれが可能になるよう尽力していきたい」と話す。

天然ガスをさらに活用し、燃料転換や高効率ガスシステムの導入などによる徹底した省エネを推進していくことで、低炭素化の実現に貢献する。また、社会コストを抑えたe―メタンへのシームレスな移行を中心に新技術を積極導入する。


その時々の最適な手段を用いて、ガスのCN化を着実に進めていく構えだ。