メタネーション設備の実証運転開始 地産地消モデルを確立しコスト低減

2025年8月18日

【西部ガス】

西部ガスが6月、メタネーション設備の実証運転を始めた。地域原料を活用した九州独自の「地産地消モデル」として、業界内でも注目されている。

2023年に環境省の補助事業「地域共創・セクター横断型CN技術開発・実証事業」の採択を受け、同社のひびきLNG基地で設備の建設工事を進めてきた。中核となるメタネーション装置(IHI製)に加え、PEM(固体高分子膜)型水電解装置、CO2分離回収装置、圧縮水素トレーラーや液化CO2ボンベの受け入れ設備などで構成されている。

中核となるメタネーション設備

一連の設備運用の知見を得ることに加え、①地域原料を組み合わせることによるコスト削減効果の見極め、②eメタン製造コスト最適化システムの運用と評価、③CO2回収装置の運用と評価、④クリーンガス証書発行におけるCO2トレーサビリティプラットフォーム(PF)の運用と評価―の計4点の検証を進めていく。

メタネーション反応に活用する水素は、水電解装置による水素や近隣工場からの副生水素を活用。CO2は、ひびき基地の都市ガス製造の熱量調整で発生したものを回収して活用するほか、福岡市の下水処理センターからも調達する計画だ。


運用の最適化でコスト減 再エネ余剰の課題解決

運用する上でのポイントは、自動化による最適制御だ。「九州では再生可能エネルギーの余剰が課題だ。余剰時における低価格帯の電力市場価格を見極めながら、コストミニマムな運用を目指す。一連の運用は『最適化システム』によって自動的に制御する。地域資源の最適な組み合わせでコスト低減を実現する『ひびきモデル』を確立していきたい」(西部ガス関係者)

実証現場のひびきLNG基地

今回の実証では、多様な事業者や組織が連携している。最適化システムやCO2トレーサビリティPFを開発するIHI、このPFを活用したCO2削減を評価する日本ガス協会、CO2分離回収装置を開発するJCCLや九州大学、ひびきモデルを参考に各地で地産地消を検討する北海道ガスや広島ガス、日本ガスなどが参画している。まさに業界を挙げたメタネーションの取り組みが各地で広まりつつある。