【JERA 奥田社長CEO兼COO】時代の変化に合わせ新たなモデルを模索し 地方創生にも本腰
東京湾でCCUS検討 DCへの直接供給を提案
井関 そして横須賀火力では東京湾で初となるCCUS(CO2回収・利用・貯留)を川崎重工業と共同で検討しています。
奥田 石炭火力はガス火力に先んじて低・脱炭素技術の導入を進めなければなりません。碧南火力ではアンモニア転換ですが、横須賀ではCCUSにチャレンジします。CO2回収がどの程度の規模の設備でどれだけ行えるのか、まずは1年半ほどFS(事業化調査)を行った上で、パイロットプラントを作るかどうか判断します。そこからパイロットプラント完成まで3年ほどかかり、30年ごろの稼働を目標としています。また、商用化に向けては、CO2の貯留地をどこにするかなど、技術以外にも解決すべき課題が多くあります。

井関 他方、碧南でのアンモニア転換の実証結果は好調と聞きました。
奥田 昨年4~6月に実機を使った大規模実証試験を行い、20%転換を達成。課題であったSOXやNOX排出量は現状以下に抑えられました。さらに石炭の出力を絞りつつの実証では、アンモニア転換率は最大28%となりました。安全性に関しても、アンモニアを漏らさない対策を講じた上で、万が一漏れた時にはどう防御するかを検証し、しっかりカバーできることを確認しています。
そして、商用運転に入ることを社内で意思決定しました。既にアンモニアのタンク4万t×4基の建設に着手しており、これが工事の山場となります。燃料調達については、政府の価格差支援を申請中で、その結果を見て検討を重ねていきます。
井関 DX需要の増大に関しては、さくらインターネットのデータセンター(DC)をJERAの火力発電所構内に設置することを検討しています。日本では新しい形となりますね。
奥田 多くのDC建設計画があり、電力系統の増強が追いついていません。迅速に電力供給するやり方を考えた時、発電所構内には空きがあり、地盤改良を行っているので液状化リスクが低く、さらにLNGの冷熱はサーバーの冷却に活用できます。こうした利点を踏まえさまざまなDC事業者にお声がけしたところ、さくら社と検討に入ったという状況です。発電所構内なので送電線の増強が不要な分、迅速で、しかも既存火力の余力で供給しますので、必要なのはその分の燃料の手当のみです。一つの新たなオプションを提示できました。
井関 米国では併設負荷を巡りコスト負担などの議論が起きており、日本で実施する上での制度的な整理が求められます。
奥田 どんなやり方であれば制度上クリアできるのか、経済産業省や送配電事業者と密にコミュニケーションを取り、DC事業者のニーズも聞きながら、最終的な形態を決める方針です。
いずれにせよ、今後いろいろな供給形態が登場するでしょう。今はDCが特定地域に集中していますが、ワット・ビット連携(電力系統と通信基盤の一体整備)などで地方に設置する構想がありますし、DCのカテゴリーもさまざまです。実情や国の政策を踏まえ、DC新設の後押しをエネルギー事業者として考えていきたい。まず迅速にやるべきものと、将来必要な手立てを、それぞれ検討していきます。

燃料調達は分散化が要 米と新たな長期契約締結
井関 上流に目を向けると、直近ではイスラエル・イランの軍事衝突で一時燃料価格が上昇したものの、今は落ち着きを取り戻しています。ただ、ホルムズ海峡封鎖などのリスクは去っていません。
奥田 燃料価格はご指摘の通りで、現時点で大きな影響は出ていません。幸い当社のLNGがホルムズ海峡を通る割合は1割程度。ただ、今後もちょっとしたイベントで需給や価格への影響があるでしょう。状況を注視するとともに、燃料の地域、そして契約期間を分散したポートフォリオを一層意識して組むことが必要です。
井関 ホルムズ海峡を通るのはカタールやアブダビ産ですか。
奥田 そうですね。ただ、中東産の調達は引き続き重要です。あれだけの生産能力・埋蔵量があり、東日本大震災の後は長期契約の価格で優先的に融通してくれるなどの魅力があります。どの国のプロジェクトにもメリット・デメリットがあり、相互補完できるようなポートフォリオにすることがやはり大事です。