アフリカで広がるビジネスチャンス 電力セクターで民間投資活況

2025年8月4日

【国際協力機構】

人口増と経済成長を追い風に、アフリカがビジネスマーケットとしての存在感を増している。

電力セクターでは投資環境が整い、欧米勢などの民間企業による参入が活発化している。

既存技術を経ずに最新技術に進展することを 「リープフロッグ」という。通常は数十年かかる変化がわずか数年で起こることから、「カエル跳び」になぞらえこう呼ばれている。近年、この現象を体現しているのがアフリカ諸国だ。1990年代のアフリカはグローバリゼーションの波から取り残され、国際社会で支援対象国として見なされていた。しかし、人口増加と経済成長を追い風に、いまや自立的なビジネスマーケットへと姿を変えつつある。中でも、民間投資を原動力にエネルギー分野での変化は著しい。

左からJICAの高畠氏、吉澤氏、杉岡氏


BtoBが本格化 民間主導で電源開発進む

長らくアフリカ諸国では、発電所や送電網の開発を公共事業として進められてきたが、2010年代半ば以降、国際機関の主導で、電力インフラ分野への民間投資を呼び込む仕組みづくりが活発化した。 

電力市場の予見性が低いアフリカでは、民間資本の参入には高いリスクが伴う。そこで公的機関が全量を買い取るPPA(電力購入契約)を外貨建てで契約する仕組みを整備。外資系IPP(独立系発電事業者)の参入が一部で急伸した。

しかし、この手法は公的な負担も無視できず、各国が持続性に課題を抱えた。20年代前半には、買い取りを制限する国も一部で現れ始め、民間投資が停滞した。

そうした中、民間企業同士が独自にPPAを締結できる環境も整備されたことで、BtoB(企業間取引)による取引が本格化。民間主導の電源開発が各国で活況を呈するようになってきている。一連の変化について、南アフリカ共和国に駐在しエネルギー事業に携わってきたJICA(国際協力機構)の杉岡学氏は、「ここ2~3年でBtoBの契約件数が急増した。産業向けや経済開発向けの発電・送電事業において、公共部門の役割が変化した数年だった」と語る。

一方で、家庭部門では、国営の送電網が届かない農村部で、ミニグリッド(小規模電力網)や、家庭用の太陽光発電システムといった分散型電源などが、普及拡大している。この動きを後押ししているのが、携帯電話の普及とフィンテック企業の台頭だ。モバイルマネー決済が利用できるため、支払い履歴を信用情報として活用できる。これにより、従来は公共事業のサービス対象外だった低所得層に民間がアプローチ可能となった。

欧米出身者のベンチャー企業や、社会的課題の解決を重視するインパクト投資家が、アフリカ電力市場への参入を加速させている。日本勢は商社など取引経験のある企業が、現地の市場動向や投資ノウハウを生かして、スタートアップとの連携やベンチャーキャピタルを活用した投資を始めている。ただ、日本企業による参入は限定的だ。

杉岡氏は、「日本ではアフリカを依然として支援の対象と見る意識が根強い。しかし実際には、各国がアフリカを投資対象として注目している。現地では、リープフロッグな発展が次々と起きており、予想を超える市場としての魅力がある。他の日本企業にもぜひ、こうした視点でアフリカの市場性を捉えてほしい」と力を込める。

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