【電源開発 菅野社長】トリレンマを直視し自社の最適解を探り 求められる役割発揮へ
火力CNのベターな手法 日本近海でCCSを検討
井関 石炭火力のトランジションに関して、GENESIS松島計画が先行しています。今、どのような段階でしょうか。
菅野 当初の着工・運転開始予定に対しやや遅れ気味でしたが、急ピッチで検討を進め、今秋、環境アセスメントの最終段階となる準備書の手続きに入りたいと考えています。本計画は水素混焼率を10%以上としており、長期脱炭素電源オークションの類型に当てはまるため、その活用も検討した上で実現を目指します。最終的にはCCS(CO2回収・貯留)と組み合わせる構想であり、ENEOSと組んで西日本での貯留地点の調査を並行して進めています。
井関 水素、CCS、そしてアンモニア利用とさまざまな手法がありますが、それぞれどう評価しますか。
菅野 どれもかなりコストが高いということが明確になってきました。その中でどれがベターなのか、これから判断しなければなりません。当社としては、海外で水素を作り日本に運ぶスキームが最も割高だと見ています。そしてアンモニアは水素より運搬は簡便ですが、天然ガスで生産した場合は山元でCO2を地下に貯留しなければなりません。この点は水素も同様です。こうした実情を考えれば、化石燃料のまま発電所近くまで持ってきてCO2を分離・回収し、日本近海で貯留する形のフィージビリティが高いのではないか、と考えています。
井関 他社とは一線を画しますね。一方、大崎クールジェンでは今年度から、調整力としての柔軟な運転を実証しています。
菅野 IGCC(石炭ガス化複合発電)の設備はコンバインドサイクルであり、さらに再エネ電源の変動などに対しても短時間で出力の調整が可能であることは確認済みです。今回はCO2分離・回収をしながら、さらに出力調整の精度を高めるべく、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受け実証していきます。商用化は松島で取り組み、大崎では仕上げの実証を行うというイメージです。
井関 本誌としてはCO2の制約があったとしても、石炭火力は安定供給のために必要なベースロード電源という位置付けは変わらず、石炭火力を使い続けていく仕組みが必要だと考えています。貯蔵面でLNGに勝るという強みもあります。
菅野 楽観視はしていません。本当にCNを目指すならばガス火力の排出規制も必要であり、石炭火力とガス火力が同様に規制されるのであれば、石炭が負けるとは思いません。ただ、CO2排出原単位が高い石炭は減らし、一方でガス火力は活用が必要、となってしまうことも考えておかないといけない。政府が掲げるCO2削減目標や制度全体、国際世論の行方などを踏まえた現実的なチョイスとして、悲観的に考えればそんな展開もあり得ます。
井関 では、Jパワーが国内でLNG火力の導入を検討する可能性はありますか。
菅野 米国やタイなどではガス火力の実績があり、チャンスがあればどこでも検討する方針です。ASEAN(東南アジア諸国連合)では石炭からガス転というケースもあるでしょう。具体的には言えませんが、さまざまな検討を行っています。