【電源開発 菅野社長】トリレンマを直視し自社の最適解を探り 求められる役割発揮へ
洋上風力は予見性あり 産業界は価値に理解を
井関 洋上風力を巡っては、一般海域の公募第一ラウンド(R1)の三菱商事が減損処理するなど、課題が表面化しています。JパワーはR2で秋田県男鹿・潟上・秋田沖を落札したコンソーシアム(代表JERA)のメンバーですが、進ちょくはどうですか。
菅野 私は、洋上風力は、電源投資の経済的な予見性が低い中では相対的にベターと思っており、ネガティブな世間の評価には同意していません。港湾区域では九州電力グループなどと共同開発している北九州響灘洋上ウインドファームが今年度完成します。本件で工事などの難しさを実際に確認し、その上で一般海域である秋田の案件に臨みます。また、政府が新たに促進区域に指定した北海道檜山沖では環境アセスメントを行っています。

提供:ひびきウインドエナジー
洋上風力のコストが計画時点より高くなっているのは事実ですが、秋田県男鹿潟上案件は風車を既に発注済み。本件はR1より先に一般海域で最初に運転開始する予定で、希少価値もあります。さらに政府が経済性の向上に向けてさまざまな措置を講じています。ですから、需要家が2030年ごろまでにCO2を出さないkW時を大量に、かつ新規に調達しようと思うなら、日本国内では洋上風力しかありません。
井関 火力や原子力よりも予見性あり、ということですか?
菅野 はい。特定の顧客と原子力でPPA(電力購入契約)を結べるかというと、日本の場合は米国のようにはいかないでしょう。運転開始まで時間がかかることに加え、原子力は社会全体の電力需要に応えるという社会的要請もあります。他方、火力の燃料のトランジションやCCSなどは、いずれもコストが高くつきます。少々高くても洋上風力は追加性がある、価値ある電源であり、それを日本の産業界にぜひ理解してほしい。30年にCO2ゼロに近づけると多くの企業が表明する中、当社も積極的に発信していきます。
そうした中、洋上風力全般のイメージを損なうような動きには困惑しています。事業性は事業者自らが作り上げないといけない。火力トランジションは高コストであると多くの事業者が理解し始めています。脱炭素電源の量的限界について、当社もしっかりメッセージを発していきたいと思います。
井関 R1でFIP(市場連動価格買い取り)への転換を認める措置についての受け止めは?
菅野 R2、R3の落札者が不利にならないようにしてほしい。R1は値段で決め、秋田では1kW時12~13円程度で札入れしています。一方、R2、R3はFIP基準価格の最低価格である3円で入れなければ勝てませんでした。今後R1とR2、R3を同じルールとする場合、3円と12円では差がありすぎます。浅い海域で風況の良い着床式のエリアは限られる中、平等な形でルールを見直すことが求められます。
井関 他方、水力では新たな取り組みとして、ダムの流入量の予測、発電計画、そして市場での取引まで一貫して管理するシステムの構築を目指しています。
菅野 同時市場の検討が進む中で、前日のスポット市場も含め各市場をどのように活用すればメリットを最大化できるのか。また、今もなお進化し続ける制度改革に対して、これまでは後追いとならざるを得なかった対応を、スピード感を持ちながら柔軟に行えるよう、予測・計画・取引と、その支えとなる各データを一貫して取り扱える仕組みを構築していきます。