【電源開発 菅野社長】トリレンマを直視し自社の最適解を探り 求められる役割発揮へ
地震・津波を妥当と評価 大間の審査迅速化目指す
井関 大間原子力発電所の審査は着々と進んでいるようですね。
菅野 地震と津波というナチュラルハザードに関して、われわれの評価が妥当だと評価されました。審査の方向性が示されプラント審査に入っており、既に6月末に1回目を開催しています。7月には原子力規制委員会の山中伸介委員長に現地を初めて視察してもらいました。私自身も7月下旬の規制委との意見交換に参加し、建設中の状況を生かした対策などについて建設的な議論をすることができました。地震と津波に関する審査には時間を要しましたが、今後はなるべくスピーディーに審査が進むよう、事業者として懸命に取り組んでいます。
地元の方々からは、福島の震災以降も一貫して早く建設を進めてほしいと、多くの声をいただいています。地元の期待に応えるべく、なるべく早く安全強化対策工事を開始する日を迎えるよう取り組む所存です。

井関 長期脱炭素電源オークションの活用は考えていますか。
菅野 制度上、活用の有無を述べることはできませんが、有力なオプションだと思います。既設炉と異なり、大間はまだ本体の建設中でありその設備投資、さらには安全対策投資も必要となります。投資回収の予見性を高めファイナンス上の課題解決に向け、固定費を確実に回収できる制度というのは資金調達の確保においても重要であり、当然ながら前向きに捉えています。
井関 他社では次世代革新炉の検討の動きが出始めていますが。
菅野 当社としてはまず大間の完成に全力を注ぎます。建設中である大間をきちんと稼働させることが何より重要です。
井関 政権運営が危うい状況ですが、その中でもエネルギー政策は着実に進めていかなければなりません。その意味でも、本日伺った内容の実現が求められます。多岐にわたるお話をありがとうございました。
対談を終えて
菅野社長の受け答えは実に明快だ。難しい課題などに対しても、あいまいな言い方はせず、自身の考えを簡潔に分かりやく話す。特に印象に残ったのは、洋上風力に関する発言。「ネガティブな世間の評価には同意していない」。事業性は事業者自らが作り上げるものだとするコメントには、こちらもハッとさせられた。石炭火力の低炭素化を着実に進めつつ、その先には大間原子力の工事再開、そしてLNG火力への参画も視野に入る。今後の展開が楽しみだ。(聞き手・井関晶)