【特集2】DRreadyの本格普及へ 自立型の事業モデル確立を

2025年10月3日

住宅の新基準適用で太陽光発電(PV)の増加が見込まれる。エコキュートが果たす役割についての展望と課題を聞いた。

インタビュー/水谷 傑・住環境計画研究所 副主席研究員

―デマンドレスポンス(DR)へのエコキュートの活用についてどうお考えですか。

水谷 国の住宅トップランナー基準に設置目標が課された太陽光発電(PV)が今後増えます。そうした中、エコキュートはPVの余剰電力の活用や電力系統の安定化を支えると思います。DR活用には需給状況に応じた稼働が必要です。翌日の天気を予測し、DR機能を搭載したエコキュートの稼働時間を制御することで貢献できるでしょう。

 また、昼間のPVの余剰電力活用として発売されているおひさまエコキュートは、逆潮流が減るため系統の安定化に寄与します。ただ、新規購入の費用がかかります。そこで、例えばFIT(固定価格買い取り)期間を終えたPVを所有し、かつ既存のエコキュートのユーザー向けに「昼間沸き上げプラン」といった料金メニューを作るのも一案です。売電以外の選択肢が増えることで、自家消費の拡大につながります。

―電力需給に応じてガス給湯が使えるハイブリッド給湯器とDRの親和性は。

水谷 「上げDR」や「下げDR」にも活用できて親和性がありますし、省エネ性も高く注目しています。100Vコンセントで設置でき貯湯槽も小型で、これまでエコキュートが設置できなかった集合住宅に導入される可能性があり市場は拡大すると思います。

ZEH新基準で条件が厳格化 「ハイブリッド」が選択肢の一つに

―エネルギー会社の理解も鍵です。

水谷 2027年度から適用されるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)新基準(GX ZEH)では、一次エネルギー消費量削減率が35%と厳しくなります。エコジョーズのみでの対応は難しく、ガス会社はハイブリッド給湯+床暖房といった提案が必要になります。電力会社も集合住宅に導入する際の選択肢になるでしょう。一方、経済産業省の公表資料では、新基準の条件を満たした初期投資が最も安いのはエコキュートです。設置場所や耐荷重などの制約がない戸建て住宅では、引き続き優位になると思います。

―現在、給湯器のDRready化に向け技術要件などの検討が行われています。

水谷 DRreadyスペックの設備が今後、本格的に市場に出ますが、DRに活用されなければ意味がありません。DRによるベネフィットが得られ、機器の価格上昇分がランニングコストで回収できるような「自立型のビジネスモデル」の確立が求められます。

水谷 傑(住環境計画研究所 副主席研究員)
みずたに・すぐる 専門は建築環境工学。家庭用エネルギーや自治体のGHG排出量に関する調査研究、住宅の省エネルギー基準の策定に係る支援業務などに従事。その他、NEDOの委員なども務める。