【コラム/10月10日】英国保守党も脱・脱炭素へ 日本はいつまで続けるのか

2025年10月10日

左傾化で支持率急落 保守党と重なる自民党の現状

ただし、労働党はなおもネットゼロを掲げており、29年まで英国では総選挙は無いので、表立った政策変更には時間がかかるかもしれない。

なおこの保守党の文書では、気候変動対策は実施しないのではなく、原子力発電の推進を行い、電気代を安くして、家計や企業が自発的に電化することで排出削減を行う、ただし数値目標の強制はしない、としている。以下に該当箇所を訳する:

Q: これは排出量削減計画を全て放棄するということか?

われわれは人々の財政と生活水準を最優先することを躊躇しません。排出量を削減する最善の方法は、よりクリーンで信頼性の高い原子力発電を増やし、電気代を安くすることで、人々が電気自動車や電気暖房を購入できる環境を整えることです。これにより節約と生活の質向上を実現するのです。政府の目標達成のためだけに強制するのではありません。英国の排出量は世界のわずか1%に過ぎません。気候変動を単独で解決することはできませんが、ネット・ゼロ政策は英国国民の生活を悪化させ、貧困化を招いています。

また、パリ協定については、離脱するのではなく、枠組みに留まって、英国の立場を説明してゆくとしている。これも該当箇所を訳しよう:

Q: これは気候変動に関するパリ協定からの離脱を意味しますか?

パリ協定は国内法における法的拘束力のある気候目標を必要としません。協定は明らかに機能していませんが、われわれは協定から離脱しません。英国が協定を順守している数少ない国の一つであるのは不公平です。
われわれは協定に留まる利点は依然あると考えており、気候問題への最善の対処法についてわれわれの主張を提示してゆきます。

日本も、国内の温暖化関連法を、2050年CO2ゼロという目標を含め、ことごとく廃止した上で(すでに以前にそのような「脱・脱炭素法案」を筆者は提示したことがある)、パリ協定には留まるという選択肢が存在するだろう。

英国保守党は、ネットゼロのような左傾化した政策を取り続けた結果、岩盤支持層を改革UKに奪われて、消滅の危機まで落ち込んだところで、ついにこのネットゼロ撤回に舵を切った。

左傾化して少数与党に落ち込んだ自民党とその姿が重なる。自民党も高市政権が新生したのを機に、早いところ脱炭素を撤回したほうが良いのではないか。


【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。近著に『データが語る気候変動問題のホントとウソ』(電気書院)。最近はYouTube「杉山大志_キヤノングローバル戦略研究所」での情報発信にも力を入れる。

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