【特集2】独自技術で水素を高精度に検知 メタネーションを安全面から支援

2025年11月3日

【新コスモス電機】

40年ほど前から水素検知の技術を築いてきた新コスモス電機。
安全対策の観点から水素社会を支え、その存在感が増している。

都市ガス業界では、2050年のカーボンニュートラル(CN)実現を見据え、水素とCO2からメタンを合成するメタネーションなどの技術開発が行われている。これらの設備の運用において、安全性確保のため、ガスや水素の漏れをいち早く検知することが必要だ。


新コスモス電機は約40年前から産業分野において水素を選択的に検知する技術開発を行い、さまざまな検知器を製品化してきた。それらのラインアップの中で、今後、メタネーション設備などでの活用が期待されるのが、定置型の拡散式ガス検知部「KD-12」だ。

    「KD-12」には水素対応の防爆構造を採用した

研究成果が詰まった技術 水素だけを通す保護膜を使用

最大の特長は、同社独自の熱線型半導体式センサー技術。「長年にわたる研究開発で培ってきたノウハウが詰まっている」。経営企画室の十河泉広報部長はこう話す。核となるセンサー部分は、コイル状の白金線に金属酸化物半導体を焼き付け、保護膜で覆われている。わずか直径0.4~0.7mmほどの球体だ。検知するガス種に応じてセンサーの素材や対応温度を変えることで、さまざまなガスの検知が可能になる。例えば、水素を検知する際には、水素以外の分子を通しにくい保護膜を使用。「空気中のさまざまなガスより分子の小さい水素だけが保護膜を通り抜けるので、微量かつ低濃度でも高精度に検知できる」(十河部長)という。その他、アンモニアやメタンなどの検知部にも同センサー技術を用いてガスに応じた選択性をもたせている。


現場に配慮した機能もポイントだ。以前の機種は、検知部のほか警報部が監視室などに設置されていたが、「KD-12」にはガス濃度と警報の表示盤を本体に搭載。これにより、警報部が不要になり、ガス漏れの発生が現場ですぐ分かるようになった。また、従来は二人体制で行っていた点検・メンテナンスも、検知部のみなので一人での作業が可能だ。さらに、現場で磁気スティックを使い、表示盤で確認しながら調整もできるようになった。


同社のセンサー技術を用いた検知警報器は全国の水素ステーションの約8割で採用されているほか、アンモニア混焼の火力発電所などでの活用も進んでいる。CN実現を支える機器として、活躍の場がさらに広がりそうだ。