重要性増す「電力と通信の融合」 異業界間つなぐ共通認識の形成が鍵
通信・送電網を一体運用 共通認識持ち優位性確保へ
─岡本さんは「Utility 3.0」を踏まえつつ、ワット・ビット連携を体現する社会像として「MESH構想」を打ち出していますね。
馬橋 通信網と送電網を社会の中で網目状(メッシュ状)になるように形成することで、全体最適を図るという構想です。人体に例えれば、通信網は神経系、電力網は循環器系にあたります。私たちの身体が酸素や血液の循環なしには動かないように、通信網も電力があってこそ機能します。双方を一体的に設計・運用することで、それぞれが循環する社会の姿を描いています。
MESH構想を実社会で実現するには、事業者の枠を超えたプラットフォームの整備が欠かせません。加えて、インターフェースなどの仕様の標準化も重要なテーマになります。
─NTTは次世代通信インフラの構築を目指す「IOWN構想」を掲げています。
馬橋 IoTの役割が拡大する中で、発電設備だけでなく、車や家電などあらゆるモノがAIを通じてリアルタイムで制御される時代が到来しつつあります。これに伴い、増大し得る電力需要に対応し、情報処理を超高速で行える通信インフラの整備が求められます。IOWN構想ではその基盤として、①光技術の導入を最大化する「APN」、②デジタルコピーを生成し、高度な予測やシミュレーションを可能にする「DTC」、③これらを包括的に制御する「CF」―といった三つの主要技術を組み合わせます。これらによって電力効率の向上や超低遅延を実現すべく、現在は30年頃の実用化を目途に日々検証が進められています。
─これらの構想を社会実装していくために、何が求められるでしょうか。
馬橋 繰り返しになりますが、異なる業界同士でもすれ違いなく議論できるよう、共通認識を持つことが大切です。日本は通信や電力分野で高い技術水準を持ち、丁寧に議論を重ねる文化もあります。相互理解を深めていけば、国際競争において優位性を保つことができるはずです。本書もその一助になればと思います。巻末には用語集を付け、忙しいビジネスパーソンの方でも必要な情報をピンポイントで確認できるようにしました。多くの方に手に取っていただければ幸いです。

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