【西部ガスホールディングス 加藤社長】グループ各社が自律し、価値観を共有しながら健全な成長を目指す

2025年11月1日

前グループ中期経営計画「Next2024」では、売上高、経常利益、自己資本比率といった経営指標の目標を達成。今年度、新たなグループ中計「ACT2027」をスタートさせた。

本業のガスエネルギー事業にやや回帰しつつ、不動産や電力事業も強化し収益力の向上を目指す。

【インタビュー:加藤卓二/西部ガスホールディングス社長】

かとう・たくじ 1985年西部ガス(現西部ガスホールディングス)入社。2010年エネルギー企画部部長、16年理事、18年執行役員、20年常務執行役員、21年取締役常務執行役員などを経て24年4月から現職。

井関 前グループ中期経営計画「Next2024」では、売上高、経常利益、自己資本比率といった経営指標の目標を達成しました。

加藤 その瞬間は非常に達成感を覚えました。ですが、直後から新たなグループ中計「ACT2027」が始動し、フルパワーで取り組んでいますので、余韻に浸る時間はそれほど長くありませんでした。

井関 社長就任から1年超。どう振り返りますか。

加藤 6月の株主総会でも、株主のお一人から「社長就任からの1年を総括してもらいたい」との質問をいただきました。想定問答にはなかったので驚きましたが、前年の株主総会で別の株主の方から「事業の裾野が広がっているのは分かるが、本業であるガスエネルギー事業強化に本腰を入れるべきではないか」と叱咤激励いただいたことを思い出し、それを踏まえてこの1年間の総括を述べました。

前年度の株主総会では、都市ガス、LPガスのみならず電力事業の強化を図り、総合エネルギー事業への回帰を進めていくこと、そして、芽が出てきた不動産事業との両輪で、収益をけん引していくことを宣言しました。それらを実現するべく、ガス事業ではひびきLNG基地における3号タンクの増設に着手。巨額の投資を伴いますので、最終投資決定の前からJERAと協議を重ねていました。

エス トラストのオーヴィジョン井尻。不動産事業は着実に安定収入に貢献

電力事業では、再生可能エネルギーの開発に加えてひびき発電所(LNG火力、62万kW)が今年度中に運転開始を予定しています。これに合わせて、小売販売・卸販売を強化する体制を構築し、営業活動を活発化させています。不動産事業は、山口県下関市に本社を置くグループ会社のエス トラストが、北部九州を中心とした分譲マンション開発を展開し、非常に順調に推移しています。西部ガス都市開発が手掛ける賃貸事業も、順調にストックを積み上げ安定収入の確保につながっています。

また、社内コミュニケーションの充実を図るため、経営層と従業員層との距離を縮めて、風通しの良いグループ風土づくりのための施策も打ち出しているということも、この1年の振り返りとしてご説明しました。


不動産事業が好調 九州経済は手堅く成長

井関 第1四半期決算は増収増益で、最終利益は前年同期比86%増と過去最高を記録しました。

加藤 不動産や電力・その他エネルギー事業の好調に加え、ひびきLNG基地の減価償却費の減少が、増益の主な要因です。 非需要期の決算とはいえ、23年度以来2期ぶりに全てのセグメントが利益に貢献するなど、「ACT2027」の達成に向けバランスの取れた良いスタートを切れたと思います。

井関 九州経済の好調も、業績を押し上げることになりそうですね。

加藤 はい。この夏を見ても、記録的な猛暑によって家庭用のガス需要は減っていますが、業務用のガスヒートポンプエアコン(GHP)の需要が堅調に伸びています。工場の新規の立地計画や撤退など、プラスマイナスの影響はさまざまありますが、福岡市天神エリアにおける都市再開発誘導事業「天神ビッグバン」で街が一層活気づいてますし、TSMCの工場誘致に伴い関連産業も周辺に進出してきているので、九州経済の手堅い成長と共にエネルギー分野はまだまだ浮上すると見ています。

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