【西部ガスホールディングス 加藤社長】グループ各社が自律し、価値観を共有しながら健全な成長を目指す

2025年11月1日

グループで価値観共有 同心円経営を目指す

井関 ホールディングス(HD)体制に移行した中で、今後目指すグループのあり方は?

加藤 HD体制への移行により、単なる組織体制の変化ではなく、「同心円経営」を目指す狙いがあります。同心円経営とは、各グループ会社が自律し対等な関係を保ちながら、同じ価値観・目的を共有しグループ全体の健全な成長を支える「分散型ネットワーク経営」にシフトするということです。これまで円の中心は西部ガスのみでした。しかし、都市ガス事業の自由化を契機に、将来的には不動産や食関連など、その時代に応じて中核事業が変わっていくようなグループ構成を目指すべきだと考えています。どのグループ会社が中心に位置しても良い経営。しかし、どの会社が円の中心にいたとしても、西部ガスグループというネットワークの中で、互いに支え合う形は変わりません。

井関 グループの在り方を変えたという意味でも、自由化は大きなインパクトになったわけですね。

加藤 ガス小売り全面自由化は序章で、総括原価方式から脱却した今が本格的な変革の途上なのではないかと思います。確かに総括原価の時代は経営は安定していましたが、(特定の会計期間の売り上げや利益を重視する)PL経営でした。そうした中では、今のような資本コストや貸借対照表(BS)重視の経営に転換することはなかったでしょう。特定の業種だけがそのような状態を続けられるわけもありませんし、マーケットの中で戦う土壌ができたという点で、自由化されて良かったのだと思います。人財面でも、次の社長候補となる執行役員や部長級の研修に力を入れています。規制に守られてきた時代とは違うので、リスク感度が高く、意思決定力のある人財を育てていきたいですね。

井関 一連のガスシステム改革を検証するワーキンググループが始まりました。何を期待しますか。

加藤 「S+3E」(安全性+安定供給・経済効率性・環境適合)を掲げて事業を行っており、3Eのうちの環境については、自社の能力と見合いで積極的に投資していく考えです。一方で地方のガス会社にとってはインフラへの投資が難しく、投資に対する補助制度の必要性を感じています。それにより、新規事業者への卸も含めて経済合理性が出てくるはずです。そういう軸で見た時に、規制緩和や改革がどうだったのかという視点を検証の軸に置いていただきたいですね。

井関 九州地域の発展と共に、西部ガスグループのますますの成長が期待されます。本日はありがとうございました。


対談を終えて

加藤社長体制で2年目を迎え、去る3月に新グループ中計を打ち出した西部ガスホールディングス。好調な九州経済を追い風に、ひびきLNG基地での3号タンク増設決定、LNG燃料転換の加速、e-メタン製造開始など、低・脱炭素時代に向けて急ピッチで経営の機動戦に取り組んでいる。競合の九州電力が新経営ビジョンで2050年家庭・業務部門電化率100%を掲げる中、ホールディングス体制をベースとした「同心円経営」の考え方で、グループ企業の強みを最大限発揮させていく。その成長戦略に要注目だ。(聞き手・井関晶)

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