【コラム/11月21日】“食欲の秋”ならぬ“制度設計の旺盛な秋”

2025年11月21日

加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

この夏のエネルギーや環境に関する審議会の開催数は比較的少なかった。一服感があったと感じられたのも束の間、秋に入ってからドライブがかかり、一気に開催件数、そして審議される内容が件数・濃度ともに増加している。これから年末、そして年度末にかけて、これまで議論してきたことの取りまとめや来年度施行の制度設計、あるいは通常国会に提出する法案の準備等、慌ただしくなることが予想される。

また、政治の世界では石破内閣から高市内閣へと交代した。新内閣は経済安全保障や物価高騰への対応を引き続き行いつつ、これまである意味、影を潜めていた成長戦略といった“攻めの政策”にも着手しており、今後の舵取りが期待されるところもある。

こうした政治の動きも踏まえ、日本のエネルギー政策や制度設計が現在どのように動いているのか、9月から11月上旬までの審議会での議論を振り返りたい。


GX政策は日本経済発展の起爆剤となるか

GX関連の審議会は、GX実行会議を筆頭に、関連するワーキンググループが配置されている。ここ数カ月で最も議論が進展しているのが、GX産業立地である。GXについては、16の重点分野について方向性を定め、GX経済移行債等を活用した必要な先行投資や規制・制度的措置、市場環境整備、ロードマップの策定が行われ、順次取り組みが進められているが、こうした新たな産業を創出、維持・発展させるためには、それら産業が集積し、活動する場が必要となる。

そこでGX戦略地域制度を創設し、①コンビナート等再生型、②データセンター集積型、③脱炭素電源活用型(GX産業団地等)の3類型を設定し、そこに関わる自治体や企業等からの提案募集を行っている。全部で199件の提案が出たとのことで、その中でも最も多かったのがデータセンター集積型で90件となっており、この分野に関心の高い、あるいは活路を見出そうとする自治体や企業が多いことが分かる。意見については、予算支援関連、規制・制度改革関連、その他に分けられて集計されたものが出されたが、多く見られたのが、電力・通信、土地、水などのインフラ整備に係る支援や制度的措置、脱炭素電源等の導入支援や利用に関する制度的措置であり、事業の予見性を高めるための支援が重要と考えているようである。

11月に行われた第5回ワット・ビット連携官民懇談会ワーキンググループでは、こうした意見も踏まえ、これまで整理した選定要件の見直し、今後の公募の進め方が提示された。その中では、「新たな集積地点として真にふさわしい地域を選定」「計画内容が勝ち筋に繋がることを審査」といった言葉が並べられている。このことからも分かるとおり、生半可な気持ちや流行りで集積地をつくり事業を行うといったことではなく、データセンターを軸とした産業創出・発展を真剣に考えている地域・企業を育てたいという意志が見て取れる。そのため、選定も2段階で行い、事業計画も洗練した上で審査を行うといった方法をとることになる。

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