【コラム/11月21日】“食欲の秋”ならぬ“制度設計の旺盛な秋”

2025年11月21日

データセンター集積型を含むGX戦略地域制度では、国家戦略特区との連携も視野に入れているが、かつて、日本の高度経済成長を支えてきたコンビナートや産業団地、道路・港湾・鉄道といった物流網が新たな産業として蘇生され、次の高度経済成長につなげられるかが論点になるだろう。必要な電力について、脱炭素電源と銘打っている以上は、再エネだけでなく原子力発電の活用やゼロエミ火力の在り方についても真剣に考える必要があるほか、不足する分は、電源移行の過渡期と捉え、火力発電あるいはガスコージェネ等の自家発電の活用、再エネ+蓄電池の運用といった複合的な対応をすることも重要な点となる。そして、必要な系統設備の増強、接続対応も並行して行うことが求められる。この点は、全国調整スキームの見直しや局地的大規模需要の接続に関する規律強化の検討と併せて議論する必要が出てくる。

また、これらの政策を推し進めるための投資資金については、GX経済移行債による先行投資と成長志向型カーボンプライシングによる原資確保といった公的支援に加え、民間金融機関や投資家が投融資を積極的に行えるよう魅力ある市場にしていくことも求められる。そのためには、今ある重点分野に優劣をつけ、勝ち筋となる産業を先行的に支援していくほか、資金をかけても成長が見込めない分野は途中で見切りをつけることもしないといけない。


様々な事業者が懸念する電力システム改革検証を踏まえた制度設計

現在進行中の第五次電力システム改革については、開始から10年経つのを機に検証が行われ、昨年度末にその取りまとめが出された。そこで挙がった論点のうち8つの検討事項について、現在、次世代電力・ガス基盤構築小委員会の下部に設置された制度設計ワーキンググループで議論されており、9月初旬から10月初旬には意見募集も行われた。制度設計の議論は着々と進んでいるが、今後、意見募集で出された意見も一定程度、反映しながら、年内もしくは年度内に方向性が見出されるものと推測される。

電力は日々の生活・産業活動に欠かせないことから、その安定供給や料金水準の安定化はもとより、利用することで排出される二酸化炭素量を低減することも最近では求められている。上述したGX政策にも深く関わりが出てくる重要なインフラとなっており、今回の制度設計では、供給力としての電源の確保、必要な系統の増強、短期・中長期の電力取引の在り方、経過措置料金の在り方、そして電源・系統確保に係るファイナンスまで、電力事業のバリューチェーン全体を俯瞰したテーマが並べられている。今後の制度設計次第では、事業者の活動に影響が出る施策もあり、その動向が注視されるところでもある。

電源については、脱炭素電源の案件形成・拡大が中長期的に必要ではあるが、収入・費用の変動によって事業予見性に影響が出る。そこで、一定規模以上の電源や系統整備(地域間連系線、基幹系統)の整備に係る費用について、条件を付した上で、広域機関が民間金融機関で賄いきれないリスクを補完するための融資スキーム構築の提案が出されている。あくまでも主役は民間金融機関で、広域機関の融資は必要最低限となっているが、どこまで有効に機能するかが論点となる。

広域機関は業容拡大に伴い、資金の借入(融資、債券発行)や容量拠出金の請求・回収・支払、再エネ賦課金の徴収・交付といった業務を行う機会も増えたが、それでも金融面は専門外のため、詳細設計に併せて専門人材の確保、体制強化が必要になるだろう。このあたりの見極めが悪ければ、円滑な融資ができず設備投資が滞る恐れもあることから、慎重、丁寧な議論が必要になる。

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