【コラム/11月21日】“食欲の秋”ならぬ“制度設計の旺盛な秋”
その他、足下の制度設計の議論も活況
上述した内容のほかにも、多くのテーマが議論されている。例えば、容量市場は制度全体の包括検証と、そのために必要な意見募集(Call for Evidence)の実施、初年度分の年次精算の準備が進む。需給調整市場では、来年度からの制度見直しを踏まえた一次~三次①の募集量削減や、一次・二次①の上限価格引き下げが検討課題となっている。再エネの自立化に向けては、コスト目標の在り方や、太陽光発電を念頭に地域との共生に配慮した既存の公益保護に係る関係法令の強化が議論されている。洋上風力発電の再エネ海域利用法促進区域における第1ラウンドの撤退検証を総括し、第2ラウンド以降の事業完遂に向けた環境整備が進む。さらに、次世代型地熱発電のロードマップ策定、託送料金レベニューキャップ制度の期中評価と物価等上昇時の料金への反映(エスカレーション)、来年度から法定化される排出量取引制度の詳細設計など、幅広い時間軸や分野での議論が進展している。
こうした制度設計は、それぞれが重要であり、関係する事業者の活動にも影響があることから、事業者も気苦労が絶えないだろう。
制度の重要性を鑑みた丁寧な議論を
秋以降、審議会の議論にドライブがかかってきたが、この動きはこの冬にかけても同様に進む見通しだ。来年1月には通常国会が始まるため、法案の策定作業が必要になる。候補としては例えば、前通常国会では出せなかった太陽光パネルのリサイクル法案などが候補として挙げられる。
また、来年度以降に開始あるいは見直しする制度も多数あることから、一定の方向性を見出しておくため、どうしても年内もしくは年度内にかけての取りまとめが必要となる。
その際、拙速に設計を行うのではなく、事業者の意見や実態も踏まえながら、丁寧な議論を行うことが重要になる。赤澤経済産業大臣が、会見の場で「ゆっくり急ぐ」という言葉を使っていたが、制度の重要性を鑑みながら、適切なタイミングで実行されるよう、議論・審議が進むことを願いたい。
【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。


