【四国電力 宮本社長】「人の力」を最大化 各事業の収益力を高めグループの成長目指す
現行の中期経営計画はスタート当初に困難に直面しながらも、一つひとつ難局を乗り越え、経営目標を達成できる見通しとなった。
足元では脱炭素化とデジタル化が追い風となる中、新中計ではコア事業と拡張領域の双方で収益力を高め、経常利益650億円以上というさらに高い目標を掲げる。
【インタビュー:宮本喜弘/四国電力社長】

井関 中期経営計画2025の最終年度ですが、達成状況はいかがですか。
宮本 2021年に公表した現行の中期経営計画では、「『電気事業』と『電気事業以外の事業』を両輪に、持続的な企業価値の創出を図っていくこと」を目標に、グループ全体で25年度に経常利益400億円以上、ROA(総資産利益率)3%程度といった経営目標を設定してきました。公表直後に燃料価格の高騰や需給ひっ迫により電気事業が大幅な赤字に陥るなど厳しいスタートとなりましたが、一つひとつ難局を乗り越えることで経営の正常化を図ることができました。また、情報通信事業や国際事業といった電気事業以外については、既存の取り組みの強化・拡大に加え、新規案件への参画や新規事業開拓の推進など、着実に利益拡大に向けた取り組みを進めてきました。これらにより、経常利益目標や、配当50円の実現、自己資本比率25%への引き上げといった経営目標を、おおむね達成できる見通しとなりました。
井関 電気事業以外では、メインはやはり情報通信事業ですか。
宮本 はい。情報通信事業が一番利益に貢献しています。子会社のSTNetが手掛ける光インターネット「ピカラ光」の四国の総世帯数に対する普及率は、9月末時点で23・7%、提供エリアに対する普及率では30・5%に達しています。利益面では、情報通信事業で、100億円以上の経常利益を出しており、現行中計の利益目標である400億円の4分の1を稼ぐほどまで成長しています。
縮小・均衡から増加へ 局面の変化はチャンス
井関 10月に公表した「よんでんグループ中期経営計画2030」のポイントは。
宮本 新たな中期経営計画のポイントは大きく二点あります。一点目は、電気をはじめとするエネルギー事業と情報通信事業を「コア事業」に位置付けた上で、これらの事業で培ってきた強みを生かしてお客さまや地域の皆さまに貢献することで、さらなる成長を目指すとしたことです。現行の中計では、省エネや人口減少の進展などによって、電気事業が縮小・均衡してしまうことがどうしても避けられず、これを補うために、電気事業以外の事業を成長させるというものでした。
しかしながら現在は、「脱炭素化」と「デジタル化」の進展によって、低・脱炭素電力に対するお客さまや地域の皆さまからの新たなニーズが拡大するとともに、将来の電力需要が増加する可能性が生じるなど、新たなチャンスが生じています。新中計では、エネルギー事業と情報通信事業を通じて培ってきた強みを生かすことで、グループとしての成長を目指す姿を描くことができました。

二点目は、経営基盤の強化策の一つとして「よんでんグループ人材戦略」を策定したことです。グループの持続的な成長を実現するために必要不可欠な「人の力」を最大化することを目指し、基本方針に「従業員と会社が共に成長しながら持続的に価値を創造する」を掲げ、「会社が求める経営戦略の実現」と「従業員の充実した人生の実現」を両立するための人材マネジメント施策を推進していきたいと考えています。
井関 30年度経常利益目標(650億円以上)を達成するためには、25年度見通し(530億円)から120億円増加させる必要があります。
宮本 足元の利益水準には一過性要因も含まれているため、経常利益650億円以上という目標は、見た目以上にチャレンジングな水準であると認識しています。目標の達成に向けては、「脱炭素化」と「デジタル化」の進展により生じる収益機会を捉えて当社の強みを生かすことで、コア事業に位置付ける電気事業や情報通信事業を中心に利益拡大を目指します。特に電気事業は、当社グループがこれまでに積み上げた知見や信頼が最も強みとなる領域であり、卸販売も含めた販売規模の拡大と収益性の向上を図っていきます。
また、コア事業からの拡張領域についても、例えば、国際事業については、現状の利益規模40億円から2倍程度への拡大を目指すなど、より高い成長を志向しています。高いハードルではありますが、ウズベキスタンにおける太陽光と風力発電事業など、既に参画済みの案件もあり、これらが今後5年の間に利益に貢献することになるため、十分に達成可能だと考えています。その他、脱炭素電力の供給やエネルギーソリューション事業についても、これまでのお客さまサービス的な位置付けからマネタイズを図っていくことで、収益の一つの柱として育成していきたいと考え、挑戦領域として位置付けました。


